いざ!辺境へ
母、マーガレットの遺品は父と妹が持っていってしまった。
《お金に成るもの》
母の部屋に一歩踏み入れてゲインと二人で呆れ返った。
「あの人達のお金に成るのは衣装や調度品、宝石しかないのね。」
「あらかたの宝石は生前にお嬢様にお渡ししてあったでしょ。残りの宝石は若かりし頃の物ばかりです。」
「目先の金目にしか興味がないのね。これで本当に領土を維持できるのかしら?」
「無理でしょうね。何れは国に返還されるでしょう。」
「被害が少ないうちに返還されることを望むわ。」
「国王陛下も解っておいでですよ。奥様やお嬢様が居なくなったら立ち行かない事ぐらいは。」
マクレーン家との縁切り、マリア、ジョセフからの慰謝料等の受け取り書類は国に提出している。
まぁ、婚約は陛下の承認無しでは成立しないしね
しかも、今回は異例中の異例
直ぐにジョセフとマリアの婚約は承認されたのよねぇ
そうしないとドルーアン家はジョセフと縁切れないし
後どれ位で父、マリア、ジョセフは民に格下げされるのか侯爵以上の人達の賭けに成ってるなんて思いもしてないでしょに
んーこれは平和だなぁと感じて良いのでしょうか?
「お嬢様、視察部隊が帰還しました。」
私の侍女マリーからの報告を受けてサロンに向かった
「お嬢様、ギルバード・キャスル以下4名辺境より戻りました。」
「お帰りなさい。無事の帰還ご苦労様でした。」
「では、早速ご報告させて頂きます。」
ひとつ頷き着席を促し、報告を聞いた
ガイム・ブラウン辺境伯様にお目通りをして来た事
母達が巻き込まれた土砂崩れは綺麗に撤去されていた事
その場所に石碑が置かれていた事
西側の辺境の地は荒れ果てて要るが手直しすれば使用出来る建物が数件有る事
荒れた田畑や農地がかなりの広範で有る事
「ガイム・ブラウン辺境伯様にお目通りしてきたの!?」
「はい、辺境の領地に入り視察と言う名の調査をしますから。相手に不甲斐な思いを抱かせ無い様致しました。」
「私の文はお届けしたのよね?」
「はい、こちらが返信の文を預かって参りました。」
「そう言うのは先に出しなさい。礼を欠かしたと思ったでしょ!」
すみませんと頭を下げてるけど、反省してないわねギルは
ゲインもニタニタしちゃって
「もう、良いわ。じゃー此処からは気心知れた幼馴染みとして話し合いましょ。
ゲインとマリーも座って」
辺境伯からの文を読みホッとした
彼方は私達の移住に好意的で復興の手助けをお願いしてきた
こちらこそお願いしますと心で頭を下げた
「ギルとマリーの両親も連れていきたいけど直ぐには無理そう?」
「我々、使用人の家族を全て連れていくには時間が掛かる、取り敢えず戦力になる家族を連れていってある程度の整備してからじゃないとなぁ」
「どれ程荒れてるの?」
「辺境伯邸の後ろに川が流れてる。領地の中にも川があるが、その川が大雨が降ると直ぐに氾濫するらしく毎回復興するのに手間が掛かる様だ」
ギルの報告を聞きながら母の残したメモ書きに目を通した。
「母のメモ書きにもそう書いてあるわね。長雨の時期は氾濫しない時は無い様で、そこばかりに時間が使われてしまうのね。棟梁が人員を貸し出してくれるから先に碁盤を作りましょう。ゲイン、メモって」
「解りました。ギル、町中を更地にするのは可能か?」
「殆ど崩れている。北西側には辺境伯邸がある。使えそうな建物は南東に多く点在していて北東は山森だな。」
「領土の大きさは此処の2倍ちょい」
「まぁ殆どが山森だな」
「取り敢えず、町の中心にある川を何とかしましょう。現地に行ってから計画をたてましょうか。直ぐに使えそうな田畑を探しましょ。マリーにお願いしても良い?」
「もちろん。奥様に習ったから、土の改良もしてみます。料理長も育てる野菜など詳しいですから彼等と改良してみます。」
「それじゃ料理長達と彼方でまく種や苗木など調達してきて」
「ギル、戻って来たばかりにだけど、明後日の出発の為にゲインと馬車屋から馬車を受け取りに行ってきて欲しいの」
「馬車は何両です?」
「本邸の馬が20頭でしょ?2乗と4乗で動かそうと思っているから5両よ。棟梁の所は自分達で馬車と馬を用意してくれるので2乗は2両で、4乗は3両よ。片道4日も掛かるのだからその内2日は馬車泊に成るでしょ?連れていく人数は棟梁の所が6人で、うちが30人だから全部で36人ってとこかしら」
「随分と派手な出発になりそうだなぁ」
「当たり前でしょ、悪い事して勘当された訳じゃないんだから。堂々と出発していくのよ。」
快晴の中、晴れやかな表情でシルビアは王都を後にした