婚約破棄
シルビア・マクレーンは18歳の誕生日に婚約を破棄された。
14歳の時に婚約したジョセフ・ドルーアンに...
婚約者のジョセフ・ドルーアンはドルーアン伯爵の次男
同じ爵位だが上中下で言うと、ドルーアン伯爵が上でうちが中と言ったところ
マクレーン家は姉妹なので私が婿取りと言う形で彼と婚約をした。
家族構成は父、母、私に妹のマリア
父親であるローランドはサボりの伯爵で、本邸にはあまり姿を見せず、別邸で過ごしている。しかも妹マリアに父寄りの侍女、メイドや伯爵騎士団に執事見習い等三、四年の若手達
まぁ、楽な方に付いてると言った感じだ。
父は母のまとめた書類にサインするだけだし、マリアは朝のんびりしているので朝食の準備等皆無
メイド達は昼までにのんびり掃除をすればいいし、執事見習いは本邸から別邸に書類の運びだけだし
侍女達はマリアのお友達感覚なので毎日キャピキャピはしゃいでる
別邸の人達は父やマリアが採用したからねぇ、仕方ないと言ったら仕方ないのかな?
だからマリアは淑女のたしなみは不完全である。
本邸に居たときはみっちり習わされていたが、父の背を見てからは別邸に引きこもり自分の楽な方へと進んでいった。
だから、マナーも知識も中途半端なのである。
伯爵の領地の管理、家業の運営は母であるマーガレットや執事のコール等が行っている。
母の働きぶりは本邸以外では、父の働きだと思っている。
まぁ承認サインは父の署名だからなのかもしれないけど、毎日遊んでいる人が仕事が出来ると思われているのには釈然としないけど、回りはそうとは捉えていなかった
父の様に仕様とすると管理、運営が儘ならない
だから遊んでいても管理、運営をしっかりやるマクレーン卿は出来る男と言われ
男女問わず父に群がる
みんな楽して稼ぎたいもんね
私はと言うと本邸の執務室で母の手伝いをしている。
いずれ婿を取ると言ってもここは私の実家だし、すぐにジョセフが家業の運営を出来るとは思わない。
少しずつジョセフに教えているのだが、なかなか上手く進まない。
本邸にあまり寄り付かず、別邸の父の元で仕事を覚える等と宣う
それではダメだと言うと『仕事は男の領域だ!女は黙って付いてこい!』等と変な持論を展開
そんな台詞は仕事が出来てから言って欲しい
だからジョセフとの結婚に不安が募るばかりだ
そしてジョセフの言葉を聞いていた妹マリアは私を失笑しながら馬鹿にする『仕事に口出す女は嫌われる、ママみたいに』がここ三年口癖の様に言われている。
ジョセフも度々そんなニュアンスで私に言ってくるし、社交界でも私の悪評を(仕事に)度々口にする事があり、周りの男性人からは煙たがられていた。
母のマーガレットは『夫を立てない、出来ない妻』のレッテルを貼られていたので、あの母親でこの子ありみたいに言われて居るが、それもほんの一部だけには通用しない。母の働きは侯爵以上は知ってるからだ。
子爵令嬢の時から才女を発揮していた。回りの諸外国の言葉を理解、悠長に話すことも出来るし、自国の歴史や諸外国の歴史にも精通しているし
多趣味である為に農作物や建築、設計、研究等に手を出す才女と言われていた。
その為王立学院を卒業する頃には当時の王太子(現国王)付きの侍女に抜擢され、後に筆頭侍女までになった。
その当時、王宮勤めをしていたローランドの父親に見初められて父と母は結婚
不甲斐ない愚息の伴侶に母をあてがい、父を立派な家主にする為にマクレーン伯爵家を任せたのだ。
祖父が元気にしていた時はまだ良かったのだが、床に伏せかちになると祖母と父は徐々に母を毛嫌いしていった。
祖母は自分の息子の不甲斐なさを棚上げ母に難癖を付け、仕事の功績を父に渡せといい
父は全ての仕事を母にやらせて良いとこ取りのダメダメ夫に成り下がった。
母は文句一つ言わずにマクレーン家の為に日夜働いていた。
祖父は8年前、祖母が3年前に亡くなると父は別邸に移り住み今まで以上に堕落していった。
そして婚約破棄を言い渡される2か月前
先の戦で壊滅的な被害を追った地域で、まだ200人弱の民が生活している辺境
そこに国からの派遣された辺境伯の地位に抜擢されたは、近衛騎士団の団長を勤めるガイム・ブラウン
だが彼は戦術や剣、腕などには自信があったが領地の管理等机仕事が苦手ときた
国境付近を警護しなくてはいけない
国からの予算も出ているが、辺境も予算を出さなくてはいけない
民は200人弱、復興を頑張ってはいるが年々民達は離郷していくばかり
税収に見合った産物も雇用も殆ど無いに等しい、その為なかなか復興迄の道のりが立たない
困り果てた彼は国王に助言を求めた
白羽の矢が立ったのはマーガレット・マクレーン
国王直々の呼び出しに応じた母、二つ返事で了承し
執事のコールを連れて西側の辺境に向かった
馬車で片道4日の陸路、視察と帰路の日数を考えて約1ヶ月の長期に渡る視察
その為ジョセフが領域の管理、運営を任されたが・・・
全く持って使い物にもならない!
あれだけ豪語していたのにも関わらず経営とは何ぞやから始めなければいけなく、彼に教えている時間が勿体なさすぎて、私自ら乗り出したのだが・・・
不運は続くとばかりに、母と執事のコール、母付きの侍女と伯爵護衛の二人が辺境の視察の帰り道、雨と悪路で土砂崩れの事故に遭い亡くなったのだ・・・
母の喪が明けてないので私の誕生日パーティーは開かないと決めていたのに
何故か本邸の大広間には沢山の料理が並べられていた
そしてそこには珍しい父と妹、別邸の使用人達が勢揃い
勿論、私の婚約者であるジョセフもいた
「お父様?私の誕生日パーティーは開かないと申し出ではありませんか?」
「誕生日パーティーは開かない。」
「ならば何故?」
「お姉様、私の婚約パーティーなのですよ?」
「?マリアの婚約パーティー?」
「そうだよ、僕とマリアの婚約パーティーだ」
はぁ?何言ってるのこの子達
「だから、君との婚約は破棄させてもらう!僕はマリアと婚約する!」