無詠唱は危険
近年、魔法の暴発による事故が多発している。原因は無詠唱の流行だ。
優秀な魔法使い諸君は「そんな馬鹿な」と思っただろう。
元々、無詠唱は暴発の危険があると学校でも教わるはずなのだから。
しかしつい最近、王国が異世界から勇者を召喚した。
勇者は魔法の扱いに優れており、すぐに無詠唱で魔法を使い始めると、それを周りにも教え始めたのだ。
長ったらしい詠唱を覚えるのは確かに億劫かも知れないが、長いのには理由がある。それが魔法の暴発を防ぐ為なのだ。
例えば『爆発魔法』の詠唱は無駄に長い。魔法を少し勉強すれば、シンプルな単語が7つもあれば充分だということに気づくだろう。少し練習すれば『爆発』を意味する単語1つで魔法が発動できる。
だが実際は無駄に回りくどい言い方で、無駄に難しい言葉を使い、無駄に長い詠唱が使われている。
「詠唱を短縮して素早く魔法を発動できるし、覚えやすいし、どう考えても無駄だ」と思うかもしれないがとんでもないことだ。
では仮に、『爆発』を意味する1単語だけを呪文とする。
するとどうだ、もしも日常会話でうっかり呪文を言ってしまったら、大事故が起きてしまう。
大抵は不発に終わるだろうが、魔法を使い慣れた者は無意識に魔力を操作できるものだ。当然、事故がおきた場合の威力も高い。
だが、1単語であっても呪文という『鍵』があるならまだいい。古代言語とかにしておけば日常会話で使うこともほとんどないだろう。うっかり寝言でも言ってしまえば終わりだが。
しかしこれが無詠唱ならどうだろうか。
無詠唱というのはつまり、頭の中で「この魔法を使おう」と考えるだけでいい。威力も、飛距離も、イメージするだけで構築できる技術だ。
最初のうちこそ、集中してイメージしないと発動しないが、慣れてしまえば戦闘中に一瞬の判断で使えてしまう。
こうなってしまったらもうおしまいである。
『1+1』という計算式を見れば脳が勝手に2という答えを導き出すように、何かの拍子に勝手に魔法が構築されてしまうのだ。
勿論、常に完全に魔力がコントロールできるならそんなことは起こらない。寝ている時も含めてだが。
さて、無詠唱の危険さはもうお分かりだろう。
それ故に、我々は若い者が無詠唱を使っているのを見て驚きの声をあげるのだ。
「あいつ正気か」と。
P.S
思った通り、勇者御一行は死亡したそうだ。
己の魔法によって。




