ぶっかけ!
言葉にならない呻き声を上げながら、男が暴れている。割れ物が飛び交い、床に散らばっていく。
「私が動きを止める。お前はそれをぶっかけるんだ」
兄貴がいう。おれは「聖水」の入った瓶の、封を外して身構えた。
「くっ、ひどい有様じゃ」
リーダーが険しい表情をする。その時、暴れる男がこちらを見た。
「こ、こっち来んな!」
おれは思わず口にした。でも知ってるぞ、こういう時って、絶対こっちに向かって来るんだ!
兄貴は暴れる男の周囲を、軽快な足取りで回っている。その円が、徐々に小さく……
「今だ!続け!」
そう叫ぶが早いか、男に組み付いていた。腕を回して乱暴に抵抗する男を、床に引きずり倒す。
「頭からぶっかけろ!残さず」
「なんか卑猥な感じ」
「な、何を言っておるのじゃ!さっさとやるのじゃ」
リーダーが顔を赤らめる。おれは床で揉み合う二人に駆け寄ると、瓶を傾けてぶっかけた。
「ククク、私までずぶ濡れじゃないか、やるな、小僧」
ちょっと嬉しそうなのは、気のせいだろう。
「ゴメンなさい!ワザとじゃ……」
ドクンドクンと波打つように、聖水がこぼれる。けっこうまどろっこしいな。
「……少年……」
魔法使いが側に来て言う。
「……こうすると早い……」
魔法使いは瓶の底を掴むと、ぐるぐると回した。
ブボボボ、と音をたてながら勢いよく、聖水が噴き出した。
「おお、凄い!」
兄貴の後頭部に大量の液体が降り注いだ。
「あばばばば、ちょっ、苦しいぞ」
ほんとゴメン。