水、火、乱戦
「呪い」にかかった者たち、大人、子供、男性、女性……
「今までと様子が違うぞ!」
「ごつい男ばかりではないのう」
気付かれないよう、物陰から様子をうかがう。
「一気に楽にしてさしあげます」
両手に聖水を持ったシスターが言った。
「あなた方は、回復者の保護を」
彼女は道路の真ん中に躍り出ると、その場にひざまずいた。
「水の精霊よ……」
街路に霧が立ち込めていく。
「まずは子供を助けるのじゃ!」
リーダーが指示を出す。シスターの魔法は体の小さい者ほど「効き」が良いらしく、幼い子供たちから路上に倒れていく。
「子供たちが大人に踏まれないように、時には実力行使もありじゃ!」
意識のない子供を脇に抱えて、安全な場所へと運ぶ。一人ずつ、なかなか地道な作業だ。
「……危ない……」
子供を抱えようと身を屈めた瞬間、頭上で炎が舞った。襲われかけていたのを、魔法使いが助けてくれたらしい。
「あ、ありがとう」
「……力仕事は任せた……」
おお、珍しく役に立ててるっぽいぞ!
「そっちを持つのじゃ……これ、変なところを触るでない」
「だってリーダー」
子供の次は女性だった。一人の力ではちょっとキツイので、リーダーと協力して救助する。
「ミスト!」
「……フレイム!……」
霧の中に、時に立ち上がる炎。背中を預けあって……メッチャ厨二っぽいぞ!
「リーダー、おれもカッコよく戦ってみたい」
女性を両脇から支えながら、おれ達は会話する。
「ふふふ、子供じゃのう。今のお主、なかなか悪くないぞ」
「そうかな」
いささか照れるな。
「未知の相手との戦いというのは、こういうものじゃろう?」
そういや誰かも似たようなことを言ってたな。家族の教えとかなんだろうか?
「……ハアハア、もう少し……」
魔法使いに疲れが見える。
「一気に決めます、『フォグ』!」
真昼の太陽の下に不似合いな、濃い霧が辺りを包む。
「やったか?」
おれは口にしてから後悔した。こういう場合……
一人を残して、男たちは倒れ込んだ。残った一人というのは……
「デケエ!軽く二メートルは超えてるぞ!」
シスターと魔法使いが小走りで近づいて来る。これはもしかして……
「聖水が無くなりました」
シスターが申し訳なさそうに言う。
「男たちも助けねばのう」
さあどうする⁉︎