水とキチガイ水
おれはテーブルに頬杖をついて、薄明るい厨房をぼんやりと眺めた。いそいそと働く二人の男。気がつけば窓の外はすっかり暗い。
団長と団員がおれ達のテーブルに料理を運ぶ。
「粗末なモンだが、まあ喰ってくれ」
団長が言う。おれは喉が渇いていたので、尋ねた。
「水を一杯いただけますか?」
「おお、何杯でも。……ついてきな」
言われるままに、団長の後を追う。
おお、水道がある。これは……
「ほう、珍しいか?」
どんな仕組みなんだろう?まあ、元の世界の水道の仕組みも知らないおれには、理解できそうもないが。
「ええ、便利ですね」
水に関しては不便しなくて済みそうだ。ありがたい。
「これはな、教団の司祭様がこの街に持ち込んだんだ」
「教団、ですか」
「ああ、シスターもそこから来ているんだ。確か、造物主がどーたらって」
あまり興味がないのか、大雑把な説明だ。まあ、説明されても理解できない……って、さっきからアホ丸出しじゃないか!これでは異世界でドヤ顔できないぞ……
「おれにはありがたい教えよりも、お勉強が必要かも」
つい自虐的になってしまう。
「いい心がけじゃねえか、ガキ!」
なんか知らないが、ケツを叩かれた。
「遅いのじゃ、先に始めておるぞ」
リーダーが……ん、なんか顔が赤いぞ。
「……少年も……どうだ、一杯……」
魔法使いが言う。顔には出ていないが、口調がちょっと怪しいような。
「さあ、どんどん飲ってください。あなた達は私の恩人ですからね!」
団員が陽気に言いながら、酒を注いでいる。
「いやあ、おれ、まだ未成年だし……」
おれはしどろもどろになる。
「???未成年?それがどうしたのじゃ?」
リーダーが不思議そうに首を傾げる。刺激的な発言だ。
「……酒のほうが、安くて安全……」
ああ、なんか聞いたことあるぞ、そんな話。でも、それって結構古い時代のことだったような……この世界、進んでるのか遅れてるのか、よくわからないな。
「じゃ、ちょっとだけ」
おれだって、年相応の好奇心はある。それに、旅先の文化に触れるというのも、勉強に……
ごくり。
ブッ、まっず!