いつまで寝てるつもりじゃ?
ん⁉︎そんなに揺すらないでくれよ。あと五分……十分……
「いつまで寝てるつもりじゃ、勇者よ!」
女の子に起こされる朝。ああ、分かったぞ、これは夢だ。
「だまされないぞ……もうひと眠り……」
「……私に任せて……」
もう一人の女性の声。なかなかアツい夢……
「……フレイミングタッチ……」
「熱っつ!」
首筋に触れた手が、燃えるように熱かった。
「……おはよう……」
魔法使いが呟く。いかにも血圧の低そうな声。
「もう昼過ぎじゃぞ、この寝坊助め」
腰に手を当ててリーダーが言う。なぜかそのポーズが、小柄さを際立たせていた。
「ああ、そうか」
おれはぼんやりと思いを巡らせる。昨夜は夜通し戦って、そのあとはよく覚えてはいないが、まあ、寝たんだろう……
「なんかゲームで寝落ちしたみたいだ」
「???ねおち?……まあ良い。着替えたら出かけるのじゃ」
なんだろう?ワクワクするな。
石畳を踏んで、おれ達三人は歩く。木とレンガの街並み、いかにもって感じだ。
「こういうのでいいんだよ、こういうので」
「何をニヤニヤして、ほほう、珍しいのか、この景色が」
「うん、おれの住む街とは全然違う」
「そうか、それは何よりじゃ」
リーダーは得意げに言った。
その部屋は、街の真ん中にある大きな酒場の奥にあった。まだ日の高い時間だからか、店には客もまばらだった。
「我々の冒険者としての初仕事じゃ!」
酒場のホールを突っ切って、おれ達は歩いた。