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電気と魔法 −電気工事士の異世界サバイバル−  作者: 林海
第四章 召喚後75日、再召喚後から30日後まで(農業振興)
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13 東方見聞報告会2


 となれば、この巣は、生殖のための巣ということになるのではないか。

 大胆に考えれば、ここにいるのはメスであり、ここで卵か子を生むのだ。入り江や洞窟は、自らを守ると同時に、より大切な卵か子を守っているのだ。

 いにしえの文献に、子を生む魚がいるという話があったはずだ(鳴滝からの注:生態系ピラミッドの上位にいる生き物ほど子供が少ないと、中学の理科で習った。子を生む魚というのは、卵胎生というのだったかな?)。

 この想像が正しければ、オスのリバータが来たときのみ、メスは交尾のために自分から入り江を出ることになる。

 交尾の後、ふたたび戻るまでの間は入り江は空のはずだ。


 我々は、その考えが正しいかを知るために、観察を続けた。そして、観察を始めて4日目、セフィロト(大の月)スノート(小の月)も出ていない夜に、ついに入り江から泳ぎだすリバータを確認した。

 天気が快晴で、星のあかりのみではあったが、恐ろしいというより実に雄大な眺めだった。


 そして、この言い方で差し支えなければだが、彼女(・・)は、明け方とともに戻ってきた。陽の光が差し始める中、巣の中で身体を折りたたみ、頭を再び入り江の外に向ける姿を確認することができた。

 


 この観察結果は、同時にまた一つの推論を生んだ。

 巣の取り合いをしているということは、最大のリバータは、最大の入り江で死ぬまでそこを守り続けることができるだろう。

 しかし、その最大のリバータ以外は、事故でもない限り、巣である入り江では死なないのだ。入り江より自分が大きくなれば自ら出ていくし、自分に匹敵する大きさの他のリバータに巣を奪われることもあるだろうが、そこで死ぬことはない。

 ということは、当てずっぽでどれかリバータの動きを苦労して止めても、そこに骨はないことになる。現に、見える範囲ではあるが、この入り江の底に骨らしきものは沈んでいない。

 そこで、この入り江での観察は終えることとし、最大の入り江の最大のリバータを探すことにした。


 ただ、ここで1つ、注意を喚起しておきたい。

 ここは岩と砂ばかりで真水がない。

 レンジャーのジャンがさまざまに工夫をこらしたものの、4人分の水は確保できなかった。その後の雨と、それに合わせてセリンが集水魔法を唱えたため、我々はなんとか飲料水を確保できたが、この地で作業することを考えるのであれば、水の確保は絶対に必要だろう。


 それから4日間、我々は歩き続けた。

 地形が起伏に富み、まだ入り江が多く海岸線は長いため、時間は極めてかかったが、直線距離としてはそう動いていないと思う。


 そして、ついに見つけた。

 岩場と砂浜の入り江という点では、他と異ならない。

 しかし、そこには大量の骨が散乱し、そして、その骨のサイズが桁違いだったのだ。

 おそらくは、だが、先住者の骨が邪魔で、砂浜に尾で押し出したのだろう。

 可能であれば、1本持ち帰ればと思ったが、4人ではどうにもならない。

 

 そして、なによりも、その入り江に横たわるリバータの大きさが恐怖だった。とても近寄る気がしない。

 とはいえ、あそこまで大きいと、却って我々は捕食対象にはならないだろう。


 もう1つ、報告すべきことがある。

 その骨の形状なのだが、魚の骨のような弧を描いた針状ではない。

 弧は描いているが、先が二股に分かれた、このような形なのだ(鳴滝からの注:ケナンさんは、弧を描いたY字形を指で空間に描いた)。

 これが、今回の目的にどう影響するかは私には判らない。


 最後に、これが、その最大の入り江に至るまでの地図だ。

 また、位置としては、かなりの南下と同時に西にも動いている。とはいえ、南のトールケの火の山に辿り着けるほどでもない。

 なので、この図を描いた後、我々は来た道を戻らず、ダーカスまでの最短距離を歩くことにした。

 そもそも帰着期日まで3日しかなく、来た道を戻っては間に合わない。

 砂漠を突っ切ることになるのは危険ではあったが、方向さえ誤らず、ネヒール川に行き当たりさえすれば良いのは解りきっていることなので、強行した。


 1つの低い山越えはあったものの、足場は悪くなく距離は稼げた。

 なお、この経路で再訪できるよう、道標は残してきた。

 昼夜を通した強行軍のため、魔法で疲れを癒やし、コンデンサは全て空になったが、2日とかからずに再び我々はここ戻れた。

 以上がこの旅の報告だ」



 聞いていた全員から、期せずして拍手が生じた。

 王様からは「見事だ」という声。

 ハヤットさんからは、「依頼に対する質の高い完遂。そして、推測と解決。これこそが重要な資質だ。モンスターと戦って勝つことが、冒険者の本質ではないことをよく理解している。ミスリル(クラス)への推薦状を、リゴスのギルド本部あてに書こう」という言葉。

 ヴューユさんからは、「リゴスの魔術師の機関に、報告書の写しを送ろう。然るべき謝礼と、二つ名が届くだろう」という言葉。


 ……ごめんね、『始元の大魔導師』様はあげられるものがないや。

 せめて、1回、飯をおごるよ。


次回、未定です。

どうしよう、いい題がまだ思いついていません。

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