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電気と魔法 −電気工事士の異世界サバイバル−  作者: 林海
第四章 召喚後75日、再召喚後から30日後まで(農業振興)

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5 昼食を食べながら


 いつもの食堂で、スープ。

 昼間だし、軽く済まそうと思って。「一緒に目玉はお付け」しません。お断りだ。

 なんか、ここに来るのも随分と久しぶりってな気がする。

 そう考えると不思議。

 自分の世界に帰って、俺の主観で60日以上間が空いて行ったマクドナ○ドには、久しぶりって感じ、なかったんだよね。


 エモーリさんが作った金の傘の凹面が、太陽の光を反射して、集められた光と熱が鍋の底を眩しく照らしている。

 そか、燃料節約ができていてなにより。


 午後も引き続いて会議だから、食べすぎない程度には食べておかないと頭が回らない。

 議題は、学校と円形施設(キクラ)の設計について。

 メンバーは、午前と変わる。現役の魔術師さん達は全員出席。ハヤットさんだけでなく、ラーレさんも来る。

 石工の職組長さんも来てくれるって。逆に、農業のタットリさんは来ない。



 「ルー、元気ないじゃん」

 そう話しかける。

 スープの鉢が運ばれてくる前に聞いておこう、そう思って、ね。

 「そうでしょうか?」

 「やめなよ。

 どうせ、嘘、下手なんだからさ……。

 ごまかさずに、正直に言えよ」

 「今度、練習します」

 「そっちの角度じゃねー!」

 

 「私……、死んだんですよね?」

 「召喚された時?」

 「はい。

 ナルタキ殿の世界にいた私は死んで、ここで新たに作られたんですよね?」

 「そういうことになるって、魔術師さん達から聞いているけれど……」

 「私って、変わらずに私なんでしょうか?」

 「違うかもしれないけど、そんなの誰も判らねー。

 俺なんか、ルーより1回余計に死んでるぞ。

 それに、その疑問を持つならば、俺の世界に派遣されたときに悩めよ。

 行って帰ってきて、1回目じゃなくて、2回死んでから悩む意味が判らん」

 「いろいろと、あるんです」

 さよか。


 「なんで、2回目からなん?」

 「……」

 「白状しないと、ルーの部屋に一番近いトイレのドアを封鎖するぞ」

 「地味に嫌な嫌がらせを考えますね。

 そういう才能、前からあったんじゃないですか?」

 「やかましいわ。

 いいから。話せよ」

 ちなみに、俺の(・・)屋敷にはトイレ、5つある。

 嬉しくて、日に3か所は制覇している。

 そんなトコに住むことになるとは、夢にも思っていなかったし。


 「分かりましたよ、ナルタキ殿。

 実は、気がついていたのは1回目からです。

 ましてや、全身に火傷をしてようやくたどり着きましたから、召喚と派遣は、ここまで怖いのだと思いました。

 元いた自分も死んでいますし、行った先でも死ぬかも知れないって、そう思ったんです。

 なので、召喚されてここに戻る前、怖くて仕方なくて、遺言みたいに言わなくても良いことをたくさん言ってしまって……」

 なんか動揺がすげーな。

 よくもまぁ、ここまで緊張感マシマシになれるもんだ。ま、あの時は、本音がじゃばじゃば漏れていたからねぇ。

 

 遺言したくなる気持ちは解るよ。

 俺、1回目は自覚しないまま召喚されちゃったし、ルーに水指で殴られたほうが痛かった。でも、2回目の派遣は本当に酷い目にはあったからね。

 とはいえ、俺の方が回数をこなして、なんとかなるなんて楽観していたかもしれない。

 でも、3回目の召喚は痛くもなんともなかった。魔素酔いすらなかった。

 技術の進歩が、ここでもあるのかも知れない。


 まぁいい。全てを聞かなかったことにしよう。

 これで丸く収まるさ。

 「俺、ここに召喚される時に、ルーが何を話していたか忘れちゃったよ」

 「今さらそれは、さすがに無理があります」

 「そか。

 でも、俺は聞いていない。聞いたかもしれないけど、忘れちゃったから、聞いていないのと同じ。

 ルー、もっと気楽にさ、250日後くらいに、考え始めれば良いんじゃない?」

 「じゃ、本当に聞いていないんですね?

 実は聞いていたなんて後出ししたら、全焼の攻撃魔法アーテを使いますよ」

 「おい、『始元の大魔導師』様相手に、攻撃するんじゃねぇ。

 本当に、聞いてないから。

 『始元の大魔導師』様を信じろ」

 「本当に安心しました。

 午後、ラーレが来ますけど、聞いてないですよね?」

 げっ……。


 「ラ、ラーレさんがなにをどう思っているかなんて、俺が、知っているはず、ないだろう?」

 「ほぅら、やっぱり、思いっ切り挙動不審だ……」

 ジト目。

 なにもそこまでってくらい、温度が低い。


 「……全焼の攻撃魔法って、どんなヤツなのかな?」

 「とりあえず、『始元の大魔導師』様、相手の目を見て話してくださいね。

 アーテはけっこう、キッツいキッツい燃え上がる魔法です。

 今日、ラーレを口説こうとしたら、火ぃ、着けちゃおっか」

 「なんなんだよ?

 ルーに、そこまで束縛される筋合いは……」

 「私の話したのを聞いてなかったら、ラーレをクドく勇気なんかなかったくせに」

 ぺっちゃん。

 俺が潰れた音。

 ぐうの音どころか、もうなにも出ねーよ。確かに、その前提があると束縛じゃねーな。


 「いや、そんな。

 やだなぁ、脅迫ですか?

 はは、スープはまだかな?」

 「ナルタキ殿の言うとおり、250日後まで待ちましょう。

 それ以前にラーレを口説いたら、攻撃魔法でお仕置きですからね」

 「……ラーレさんの方から、俺をクドくかも知れないじゃんか?」

 「したら、『ラーレ、もっと気楽にさ、250日後くらいに、考え始めれば良いんじゃない?』って言えばいいんですよ。

 それがフェアってもんです」

 完璧だな。

 脅しと論理がきちんと組まれていて、半分くらいは俺の自業自得で、反抗できる余地なんかない。


 女って怖い。

 俺、「JKくらいに見えるルーは、確かに半分は大人だけど、半分はまだ幼い。その幼いところに、俺は付け入っているかも」なんて、上から目線で考えていた自分を、せめて1つ2つはどやかしたい。

 完全に俺、ルーの手のひらの上で踊っていたじゃねーか。


 スープが来た。

 真ん中に垂直に立てられた、金のスプーンを握る。


 いつから俺、ここまで力関係をやっつけられていたんだろうねぇ……。

次回、御前会議3、の予定です。

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