プロローグ
王都を出てすぐの草原をわたしは1人で歩いていた。
先日王城に現れ2人の勇者を殺した魔王。
その時生き残ったわたし達3人はレベルアップし、魔王に対抗するためにこうして魔物を狩りに来たという訳だ。
今日は初日という事もありそれぞれ個人の力を測るため別行動をとることになった。
しばらく草原を歩いたところで1匹のゴブリンと遭遇した。
この草原に現れる魔物はこの世界の人間、つまりレベル1の身体能力でも十分に勝てる程度だと言う。
100センチほどの身長に緑の皮膚、下半身に布切れを巻いた醜い怪物。
相手は素手のゴブリン1匹、王様に貰った最高級の業物らしい剣を構える。
おそらくこの剣なら一撃でゴブリンを絶命させる事が出来るだろう。
ゴブリンがこちらに気付き一直線に走り出し距離を詰める、わたしの数歩手前で奇声と共に跳躍する。
ズサっ
剥き出しになった腹に剣を突き刺した。
ゴブリンは悲鳴であろう奇声を上げ、剣を引き抜こうと剣を掴むが今度は掴んだ手が斬れる。
さらに奇声を上げるゴブリンだが徐々に動きが少なくなり。
奇声が弱々しく消えていった。
絶命したゴブリンから剣を引き抜くと、腹から大量に紫色の血液が吹き出してた。
自分でも不思議な事に罪悪感は少しもなかった、命を奪ったといっても相手は醜悪な魔物、ならば罪悪感などない事が当然だろうか。
それとも魔王を殺すという目的のための尊い犠牲だからか。
剣から血液を拭き取り鞘に納める。
勇者の証である1枚のカードを取り出し獲得した経験値を確認する。
カードには空の瓶が描かれている。これが満たされた時に勇者はレベルアップするのだという。
レベルアップ、勇者にのみ存在するシステムだ。
この世界の人間はレベル1、それはどれほど魔物を倒しても変わらない。
だが異界から召喚された勇者は違う、レベルアップをする事で人間を超えた身体能力や特殊な能力を得ることが出来る。だから、魔王は勇者にしか倒せない。
だが、カードに描かれた瓶にはなにも変化がないように見える。
ゴブリン1匹を倒したところで得られる経験値は少ないということだろう。
レベルアップはまだまだ遠そうだ。