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シンデレラ乙女に恋をしてー前編(百合表現あり)

ブクマや感想、評価ありがとうございます。

長くなってしまったので前後編分けました。

後編は明日か明後日あげます。

シンデレラ乙女に恋をして



 昔、子供のころ君と約束したことを私はまだ覚えている。

「ねえ、アカユリ。約束」

「約束?」

「うん。僕が大人になったら必ず君を迎えに行くから。それまではお別れ」 

「お別れ? そんなのは嫌だ。私はあなたと一緒にいたい」

「ふふふ。アカユリ。わがままを言っちゃあいけないよ。君と僕じゃあもう違いすぎるんだ。さよなら。僕が迎えに来るまでどうか幸せでいてね」

「待って、待ってよ! ……!」


 夢か。私は起き上がり時計を見た。時刻は九時を少し過ぎたくらい。少し離れた街に住んでいる婚約者のボン王子と結婚することになっていた。今日はその日程合わせにこの街に来てくれるらしい。しかし、私は乗り気ではない。別段、その人が悪い人とか、嫌いだからというわけではなかった。その人はとても優しい。良い性格をしているし、嫌いでもない。しかし、私には好きな人がいるのだ。そのボン王子のほかに好きな人が。

その人は隣町に住んでいるメアリーという女性である。じゃあ何故王子と結婚させられることになっているのかって?それは、私が親に言ったらきっと反対されるからそのことを黙っていた。そしたらなかなか結婚しないことを親が心配して私の事を婚活のパーティに連れて行ったのだ。そこでボン王子に気に入られて不本意ながら交際が始まったというわけ。じゃあ断ればいいじゃんと思うかもしれないが、相手は王子という地位相手。断ったら何をされるか分からなくて断りずらかった。まあ、交際していってそんな人ではないことが分かったのだが。

「アカユリお嬢様。そろそろ服をお召しになる時間ですよ」

 ノックして私の部屋に入ってきたのは召し使いのマリアだった。その手にはきれいな白色のドレスを持っていた。顔合わせのために着る服のようである。

「きっとこの洋服はお嬢様にはお似合いですよ」

 マリアはご機嫌でニコニコとそんなことを口にしていた。ドレスを着させてもらいながら彼女のことを思い出すと私は思わず呟いた。

「会いたいな」

「おや、恋煩いですか」

 マリアは聞いてくる。まあ、そんな感じとごまかした。恋煩いしているのは別の人だけどね。とはとても言えない。そんな事を言ったらメアリーや両親はどんな顔をしてしまうのだろうか。余計な事を言って心配をかけたくはなかったのだった。

「お久しぶりです。ボン王子様。お越しくださりありがとうございます」

「お久しぶりです。アカユリ姫。フフフ。貴女のような素敵な女性に会うためなら何度でも会いに行きますよ」

 顔合わせに来て、私に向かって笑いかけて頭を下げるボン王子。相も変わらず紳士的でいい人だ。私が結婚するのが申し訳なるくらい。こんな良い人ならもっと素敵な女性と結婚すればいいのにとすら思う。

「もしもし、アカユリ姫。聞こえてますか」

 おっと。考えごとをしていて話を聞いていなかった。

「申し訳ありません。ちょっと考え事をしていて上の空になってました」

「いいんですよ。ならもう一度お話ししますね。結婚式をあげるのは今日から一週間後、場所はこの街でいいでしょうか」

「それでいいですけど、何故こちらなのですか。また皆さんにおいでいただくことになりますが」

「こちらのほうが私の国より自然が豊かで綺麗ですからね。うちの身内にもぜひこちらの豊かな自然を味わってもらいたいんですよ」

 ボン王子は笑って言った。これだけ非の打ち所がない男性もなかなか珍しい。まあ、まだ数回しかあっていないから隠しているということも十分にありえるのだが。それにしてもこんな自然に親切にできる男性は私はなかなか見たことなかったので驚いた。日取りも終わって私はボン王子を街の中に案内することにした。私の下手くそな街の案内を聞いてもボン王子はずっと嫌な顔一つせずにニコニコと話を聞いていた。街の案内を終えて満足したボン王子は自分の街へと帰っていったのだった。私は彼に会ってみて思った。やっぱりもう一度彼女に会いたい。隣町だから行くこと自体は容易だとは思うが、どうやって町から出よう。こんな私でも一応のこの街も城の王の娘だ。簡単に外出を許してもらえるとは思えない。だからと言って素直に隣町の女の子に会いに行くというわけにもいかないのだ。困り果てていたら、マリアが部屋に入ってきた。

「今日はお疲れ様でした。お嬢様」

 部屋に入ってくるとニコニコと笑いながらそういうマリア。そうだ、マリアにお願いしよう。きっと彼女は優しいから私が隣町に買い物をしたいと言えば、なんのためらいもなくついて来てくれるだろう。私はマリアに言った。

「マリア。悪いんだけどさ、ちょっと隣町まで買い物をしたいんだよね。だけど一人で行くわけにもいかないからさ、一緒に付き添ってくれない?」

 私はそう問いかけるとマリアは言った。

「別にそれはいいんですけど、それならわざわざお嬢様が行かなくても私が代わりに行って買ってきますよ?」

 「いや、私が直接見て決めたいの。いいでしょ、お父様達は街の外に出るなってうるさいし、お願い。マリア。一生のお願い」

 マリアに必死に頼む。マリアは仕方なさそうにやれやれとため息をつくと言った。

「よっぽどボン王子が好きなんですね。もう、仕方ないですね。では準備をしてください。あまり帰りが遅くなるときっと怪しまれます」

 私とマリアは日が登りきる前にこの街を出発したのだった。


 隣の村だったため、そこまで長く歩く事はなくすぐに隣の村に着いた。さて、ここからどうやって、マリアと離れるかだ。直接言ってもおそらくマリアは危ないですよと言って離れてくれないだろう。一応なるべく派手ではない服を着て、庶民に人たちに違和感のないように紛れるようにしているが、心配なものは心配なのだろうか。上手く離れる必要がある。隣村に着いたら買い物という名目でアクセサリの店を見に行く。

「マリア。ここの村はアクセサリーを作る技術が発達していて、ここでしか買えない限定アクセサリーも売っているから、ここは小さい村ながらなかなか人気で色々なところから遥々やって来る人もいるんだって」

「そうなんですね。確かにどのアクセサリーも良い素材を使われているのかどれも綺麗ですよね」

 ここのアクセサリーショップは、恋人や友達へのプロポーズやプレゼントに使われることが多く、男性からも、女性からも人気を集めている代物の一つ。特にここら辺はアクセ通りと呼ばれており、各種それぞれ個性が違うアクセサリーが並んでいるためどの店も同じくらい人気があるんだとか。私はそれを利用しようと考えた。

「ねえ、マリア。悪いんだけどさ。ここからは別行動にしない。私達二人が同じ店を見るよりも散らばって別々の店を見て回ったほうが早くお目当てのものが見つかると思うの」

 するとマリアはダメです。と首を振った。相変わらず過保護だな。そんな大げさに考えることもないのに。

「大丈夫だって。ここは人が多くて、みんな自分の買い物に夢中だから私が姫って気づく人は誰もいないよ、きっと。近くからは離れないし、何かあればすぐ助けを求めるから」

 説得するとマリアはまだ不服そうな顔だったが、諦めて分かりましたと言う。

「ただ、何かあれば絶対に私を呼びに来てくださいね。お嬢様は時々おてんばなところがありますから」

 



そう約束をして、私たちは一度分散してお店を回る事にした。

「マリア……早速約束を破ってごめんね」

 私はボソッと呟くと罪悪感を背に走り出した。店を抜けると小さな集落が並んでいるところにたどり着く。しかし、彼女の家を知らない私は近くを歩いているおばさんに尋ねた。

「あの、すみません。メアリーって子が住んでいる家はどこにありますか」

「あら、メアリーちゃんに会いに来たのかい。あの子の家はあそこの角の家だよ」

 親切に教えてくれたおばさんにお礼を言って走り出した。もうすぐ会える。そう思うと胸のときめきを抑えることが出来なかった。

 家の前に着くと一呼吸おいてノックをする。

「おじゃましまーす」

 大きな声で言うが中からは返事はなかった。そっと家のドアを触ると、鍵自体はかかっていないようで扉は開いた。中をそっと覗いてもう一度言ってみた。

「お、おじゃましまーす。すみません。誰かいませんか」

 すると刺繍されていないボロボロの服を着た女の子が台所から顔を出す。

「だ、誰ですか。申し訳ありませんが私の家からとるお金はありませんよ」

 私のことを強く睨みつけ彼女は言った。借金取りにでも追われているのだろうか。

「いや、違うよ。私は君に会いに来たんだよ」

「私に……ですか? 貴女が私に何か用なんですか」

「メアリー。私のことを忘れたの? アカユリだよ。よく昔に遊んだでしょ」

「アカユリですか。すみません。覚えていないですね。そんな子」

 彼女はあまり私のことを覚えていないようだ。しかし、そんなの。

「そんなこと関係ない。私は君が好きなの。愛してる。君は私のことを忘れたかもしれないけど、私は君のことを忘れたことはないわ」

 必死に伝えるが、彼女は首を横に振った。

「いきなり困ります。それに、貴方はお姫様で私はただの村娘。貴女と私は一緒にはなれないんです」 

 次の言葉を言いかけたが彼女は全く耳を貸してはくれない。そして出て行ってと家から締め出された。外から声をかけるがいくら言っても聞き耳を持ってくれないようで私はしかたなく諦めて帰っていった。

 村から戻るとマリアがおろおろした様子をしていたが、私を見つけて胸をなでおろした。

 「よかった。店を探し回ってみてもお嬢様が見つからなくて凄く心配してたんですよ。てっきりお嬢様の身に何かあったのかと思いました」

 「ああ、どこまで店があるのか歩いてたら道に迷ってしまって」

アハハ……と苦笑して言った。流石に怪しまれると思った。しかし、マリアはそこまで深くは言及せずに言った。

「まあ、いいでしょう。お嬢様が無事なら。そろそろ帰らないと疑われますよ」

 マリアがそう言い歩きだした。そういえば、メアリーが気になることを言っていたな。私が姫だって事を会話の中でメアリーに言ったっけ。

「何してるんですかー早く帰りますよ」

 まあ、いっか。私は急いでマリアの後を追った

 数日後、再びボン王子の街の人たちがこの街を訪れていた。どうやら結婚式の下準備らしい。準備を私の街の人とあちらの街の双方が準備をするらしい。ずいぶんとごくろうなことである。どうやらボン王子も来ているようで、こちらに話しかけてきた。

「やあ、準備は順調のようですね」

「ええ、そのようですね。皆一生懸命で何もしないのが申し訳なるくらいです」

「アハハ。式の主役はどーんと構えていればいいんですよ。……あの。アカユリ姫、こちらで少しお話をしませんか」

 ボン王子はそう言い私を町はずれの教会まで連れてきた。ここも結婚式に使われるらしいのか、中に入ると飾り付けがされてある。しかし、もう終わったらしく中には誰もいなかった。中に入るとボン王子は言った。

「よかった。ちょうど誰もいなかった。あなたとは一対一で話をしたかったから。

私と一対一で話をすることなんて一体何のことなのだろうか。

「もしかしてアカユリ姫は結婚については本当は乗り気ではないのですか?」

「それは、なぜそう思うのですか?」

「きのせいかもしれないですが、結婚の話をしてことが進んでからアカユリ姫あまり笑顔を見せなくなったし、本当は乗り気じゃないのかなって思っただけです。

 本当は結婚したくないか。どうやら彼には見抜かれていたのか。でも前にも話したが、彼が嫌なわけではない。彼はいい人だし、ただ。

「他に好きな人がいるとか、ですか」

 次思っていたことを先に言われて思わず驚きを隠せなかった。そしてボン王子は言う。

「アカユリさん。結婚というのは二人の人生を一緒にこれからずっと共にするものなんです。だから、あなたが乗り気じゃないなら結婚はする必要はないのです」

 私は。私はいったいどうすれば。確かにボン王子は好き。でもそれと同じくらいには、あの子も、メアリーも好き。だからどうすればいいのか分からない。ボン王子はどういう意図で今そんな話を始めたのだろうか。さらにボン王子は続けて言った。

「僕には、昔迎えに来てって約束をした人がいるんです」

約束。その言葉を聞いて思い出した。

「……そく。僕が大人になったら……を迎えに行くから」

「待って行かないで!……!!」

 とぎれとぎれだけれど研ぎ澄まされた古い記憶。その記憶の人ってまさかボン王子だったの。驚いてボン王子を見るとニコッと笑って言った。

「やっと思い出していただきましたか。長くなって申し訳ありません。ガラスの靴をもってお迎えに参りましたよ。お姫様」

 そういうとボン王子は笑うのだった。


 ボン王子が帰ってから考えた。それは一体どういう意味だろうか。なぜこのタイミングで彼はそのことを言ったのだろうか。本当に昔の記憶の人って彼なのだろうか。疑問は疑問を重ねて、考えれば考えるほど頭が痛くなった。見たところメアリーも私のことを覚えていそうになかったし、やっぱり過去にあいまいに残っていた記憶というものはボン王子のものなのだろう。 

「いや、まだそんなのはわからない」

 やっぱり会いに行きたい。直接会って確かめたい。私は話をしてそう思った。また拒絶されるかもしれないが、このまま何も分からないまま終わるよりはずっとずっとましだと思う。私は決意を胸に城から抜け出す準備をした。

 

 流石に何度もマリアに頼むわけにはいかない。怪しまれるからだ。つまり今回は一人抜け出して隣町にまでいかないといけない。昼間は常に兵士たちが出入り口に立って怪しい物が通らないか監視をしている。つまり、城を抜け出すなら夜しかない。幸い夜は城に鍵がかけられているため、監視する必要もなく扉の前は誰もいない。城の中は昼の賑やかさが嘘のように静まり返っている。私は静かにベットから出ると、目立たない服に着替えて部屋を出た。音をたてないように城の扉まで向かおうとする。音をたてないように慎重に歩いていたが、部屋からろうそくをもって出てきたマリアに出くわしてしまった。

「あれ、お嬢様。どこへ行かれるんですか」

 まさかちょうど八合わしてしまうとは運が悪い。しかし、まだばれていない。ごまかせる。私は息を飲むと言った。

「いや、ちょっとおトイレのほうに行きたくなってね」

 すると、マリアは不思議そうな顔をして聞いてくる。

「あれ、お嬢様の部屋の近くに御手洗いってありますよね。何故わざわざこちらに来ているんですか?」

 しまった。そうだった。これじゃあ余計に怪しまれるじゃないか。

「いや、たまにはこっちのトイレを使いたくなって。気分?」

 私は適当にその場をごまかすと逃げるようにトイレに駆け込

んだ。少し無理があっただろうか。しばらくしてトイレから出て誰もいないことを確認する。辺りを見渡すがマリアも部屋に戻ったようで、誰もいなかった。トイレを出て私は城の扉まで急ぎ足で走る。静かにドアを出て街に出た。さすがに夜の街って感じだ。昼間の賑やかさが嘘のように静まり返っている。人気一つも感じられない。急いで街を抜けると、隣の村まで走っていった。

後編は明日か明後日。

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