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ひとつ屋根の下 ~It`s happening life~  作者: 建野海
ひとつ屋根の下 ~It`s happening life~
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It`s happening life

長かった夏休みもあっという間に終わりを告げた。

 春からかけて起こった怒涛の出来事の数々を密かに思い出しながら、晃一は朝食を食べていた。

 既に礼次郎と亮子は仕事に出かけており、今日の食事当番である美咲は一足先に朝食を食べ終え、起きてきた晃一に準備してあった朝食を差し出し、まだ起きてこない千沙都を起こしに向かっていた。


「おはようございます、お兄ちゃん!」


 元気な声と共に夏服姿の陽菜が姿を現す。


「ああ、おはよう。陽菜」


 朝の挨拶を交わしてテーブルに準備された自分の朝食を食べに席着く陽菜だったが、キョロキョロと周りを見渡し、


「あれ? お兄ちゃん一人ですか?」


「ん? ああ。美咲姉さんなら今ねぼすけの千沙都のやつを起こしにいったよ。新学期初日だってのに、相変わらずあいつはだらしない。

 陽菜もああならないように気をつけろよ?」


 陽菜の問いかけを美咲の姿が見えないことが気になったのだろうと考えた晃一はそう伝える。だが、それを聞いた陽菜はニヤリと何か悪いことを考えている時の小悪魔な笑みを浮かべ、


「そうですか……ふふふっ」


「おい、陽菜? まさか……」


 美咲と千沙都の姿がないことをいいことに晃一の傍に近寄り、こっそりとキスをするのだった。


「えへへ~お兄さ~ん」


「馬鹿! お前、家では駄目だって言っただろうが。 こら、離れろって」


「い~や~で~す。学校が始まったらお兄さんと離れないといけないんですから~」


「節度は大事だってこの間話したばっかりだろうが!」


「それはお兄さんの理屈であって私は全然納得していません!」


 告白の日以来、晃一としては二人だけのデートならともかく、家族の目もある自宅ではさすがに恋人になったといえども節度を持って接するということをこれまで幾度となく陽菜に説いてきたが、彼女は晃一の理屈に納得していないようで、好きならば常日頃ずっと居たいという理屈を持って対抗していた。

 残り少ない夏休みの間中べったりと陽菜にくっつかれていた晃一はある日千沙都から『え? さすがに仲がいいとかいうレベル超えてない? ちょっとキモいんだけど』と心を抉る一言を口にされて密かに傷ついた。

 そして、あまりに仲がよくなった二人の関係に美咲はなんだか薄々気づいているような意味深な笑みを向けることが多くなり、晃一は今は家族に秘密にしている二人の関係をいつ話したものかと毎日こっそりと考えているのだった。


「ゲッ! あんたたちまたそんなベタベタしてんの? 陽菜~そんなに懐いてるとそのうち晃一から襲われるから離れたほうがいいよ~」


 陽菜との言い合いを続けていると美咲に起こされ、まだ眠たげにしていた千沙都が二人の様子を見て開口一番にそう口にした。


「ひーちゃん。ちーちゃんの言うとおりコウ君も困っているみたいだし、せめてお家ではもう少し控えめにしてね。仲がいいことはいいと思うけれど、仲が良すぎるのも……ね?」


 千沙都に続いてリビングに戻ってきた美咲もまた、二人の様子をみて明らかに何かを察している様子ではあるものの、敢えて直接言葉にせず遠まわしな口調で陽菜を嗜めた。

 千沙都はともかく、しっかりものの長女である美咲に注意された陽菜は渋々といった様子で晃一から離れ、モソモソと用意された朝食を食べ始めた。

 晃一、千沙都、陽菜が朝食を食べ終える頃にはそろそろ自宅を出ないといけない時間が迫っていた。四人はそれぞれ学校への準備を済ませると玄関から出た。

 自宅の鍵の扉を長女である美咲が閉め、


「それじゃあ、みんな。今日は初日だからすぐ学校終わるだろうけど帰りはあまり遅くならないようにね」


 三人に向かって心配そうな様子で美咲が呟く。


「は~い。もう、ホント美咲姉は心配性だな~」


 千沙都はわかっているといった口調で返事をするが、どことなく嬉しそうな様子だ。


「あ! 私今日学校終わったらレナちゃんと一緒に図書館に行ってから帰るからちょっと遅くなります!」


 かつて知り合った少女との約束があるため帰りが少し遅れると元気そうに陽菜が答える。


「俺は、特に用事もないし真っ直ぐ帰るよ。昼食の準備は任せて」


 今となっては自然と出てくる〝家族〟として当たり前の言葉を晃一は口にした。

 そして四人はそれぞれの学校に向けて歩き出す。春先、1学期の始まりの時とは明らかに変わった関係性と共に。

 夏が終わっても眩く照らす太陽と雲ひとつない晴れ渡った青空が彼らを照らす。これから先起こるであろうハプニングな日々も今の彼らならば難なく乗り切れる。

 夏休みを終え、ひとつ屋根の下から飛び出した春日家一同の新しい日々はこうして幕を開けるのであった。

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