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ひとつ屋根の下 ~It`s happening life~  作者: 建野海
美咲の章
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学院案内人

男性教諭一同が揃い、さっそく荷物の運搬が始まった。

 夏の強い日射しと高い気温もあり、荷物を運搬していると自然と大量の汗が服に滲んでいく。

 作業開始から小一時間。人手が必要な重い荷物を会場である学院の体育館の中に運び終え、晃一はようやく一息ついた。

 作業を始めて思ったが、女学院という特性もあってか教員の多くはやはりある程度年配の方が多く、確かにこれは若い人手を求めているというのも納得だった。


「お疲れ様です」


 作業を終えて背伸びをしていた晃一に玉置が声をかける。


「あ、玉置先生。お疲れ様です」


「ありがとございます。本当に助かりました。見ての通り、私たちもだいぶ年齢を重ねているものでして、若い男性のお手伝いというのは君が思っている以上に非常にありがたい申し出だったんですよ。

 君を連れてきてくれた美咲さんには本当に感謝しないといけないですね」


「あはは。そんな、大げさですよ。こう言っては失礼かもしれないですけれど俺も今日は特に予定もなかったので。

 どうせ暇な時間を過ごすくらいなら、誰かの手伝いをして喜んでもらえるのならこちらとしても嬉しいです」


「そう言っていただけるとありがたいです。さて、晃一くんでしたか? この後もし何もなければ今日のお手伝いのお礼に先ほどお話していた飲み物と昼食をお渡ししたいのですが……」


「それなんですけれど、もし俺に他にお手伝いできることがあれば何か協力をさせていただきたいのですけれど」


 元々美咲と話をしていた考えを玉置に話すと少しだけ驚いた表情を浮かべる。


「ふむ、その申し出はありがたいのですが、本当にいいのですか? こちらとしては、先ほどのお手伝いだけでも既に十分すぎるほどではあるのですが」


「構いません。先ほども話させていただきましたけれどなにぶん家に帰ってもやることのない暇人なものでして。

 それとちょっと考えたいこともあるのでこうして手伝いをさせていただければ、その間に考えもまとまるかなと思いまして……。どうでしょうか?」


「そうですね……ふむ」


 晃一からの申し出が予想しなかったものであったためか、腕を組み考え始める玉置。しばらくして、考えがまとまった後、玉置は不意に晃一の後ろに視線を向け、


「ちょうどあそこで暇をしている二人がいることですし、せっかくの申し出を無碍にするわけにもいきません。

 もしよければ彼女たちに着いてお手伝いをしていただけないでしょうか?」


 玉置の言葉に晃一が後ろを振り返るとそこには体育館の入り口の扉の影に隠れ、こちらの様子を盗み見る二人の女生徒の姿があった。


「わわわっ、ルナちゃんどうしよう。見つかっちゃったよ~」


「こら! 馬鹿! 声が大きい! もう馬鹿馬鹿! 光! あんたがトロイから気づかれちゃったじゃない!」


 姦しく騒ぐ二人の少女たちであったが、玉置の無言の手招きにバツが悪そうな表情を浮かべて晃一の元へと近づいてきた。


「光さん、月子さん。二人とも自分の仕事はどうしたのですか?」


「えっと、それは……」


 玉置の問いかけに気の強そうな少女はどう返事をしたものかと言いよどむ。対して能天気そうなポワポワとした雰囲気を身にまとった少女はその雰囲気通りの何も考えてなさそうな声色で言いよどむ少女の代わりに答えを返す。


「えっと、ルナちゃんと私はお仕事がなくなっちゃったので、美咲先輩の噂の弟さんの姿をこっそりと身に来てました~」


「ちょっ! 馬鹿!」


 ワタワタと上下に手をバタつかせて馬鹿正直に答える相方の少女の答えに慌てた様子を見せるルナと呼ばれた少女。


「まったく、あなたたちは……。いいですか? 聖園女学院の学生たるもの外部からわざわざ手伝いにきてくださっているお客様がいる前で堂々と作業をサボるのは感心しませんよ」


「うっ……ご、ごめんなさい」


「すみません、先生。私はやめておいたほうがいいっていったんですけど、ルナちゃんが……」


「なに言ってんのよ! あんただってあたしが気にならない? って聞いたら『確かに一回くらい見てみたいね』って言ってたじゃない!」


「いひゃい、いひゃい。ほっへたひっぴゃらないで~」


「このアホ~。あんたのせいで~」


 仲がいいのか、悪いのか。目の前の少女たちのやり取りを見た玉置は顔に手を当てて深い溜息を吐き出していた。

 そして、このやり取りを蚊帳の外で眺めていた晃一は二人の少女を見て


(なんか、すごい特徴のある子達だな。傍から見てる分には面白いけど、先生からしたら手のかかりそうな子たちなのかな?)


 と、彼女たち二人の第一印象をそのように抱くのであった。

 しばらく黙って二人のやり取りを眺めていた晃一であったが、パンッと玉置が手を合わせて一拍し、その場の空気を変えると、


「はい、そこまで。いい加減に雑談はやめにしましょう。光さん、月子さん。お二人には今から学院内を周っていただき、手の足りていない人たちの手伝いを彼、晃一君と一緒に行っていただきます。

 もっとも、彼は善意で手伝いに来ていただいている来客ですのであまり無理をさせないように」


 二人の少女に次の行動の指示を出した。


「さて、晃一君。大変申し訳ありませんが、今お話したように彼女たち二人に付いていただいて学院内で手の足りていない場所でこのあとお手伝いをしていただくことになりますが、かまわないでしょうか?

 もちろん、無理のない範囲で構いません。疲れたらいつでも休憩を取っていただいてもかまいませんし、帰りたくなったなら二人に声をかけていただいて御礼の品を受け取っていただいた後にいつ帰っていただいてもかまいませんから」


「はい、わかりました」


「では、私はこの後他にやることがあるので、これで失礼いたします。二人とも、くれぐれも失礼のないように」


 最後に再三の念を光と月子の二人に押して玉置はその場を後にする。残された三人はどうしたものかと互いに最初の言葉を探していたが、やはりここは年長者である自分からということで晃一が話を切り出した。


「えっと、なんだか手間をかけることになってごめんね。俺は春日晃一。さっきちらっと話を聞いてて気づいたけれど、たぶん二人とも美咲さんの知り合いだよね。

 玉置先生からお願いされたけれど、できる限りこの後みんなの作業のお手伝いをさせてもらう予定だ」


「えとえと、初めまして! お話は美咲先輩から何度か聞いてます! 私、光って言います! 

 よろしくお願いします! 晃一さん!」


 元気よく挨拶をする光。それに続くように月子も


「……月子です。美咲先輩の新しい弟さんですよね? お手伝いに来てくださってありがとうございます。

 あたしたちが学院内を案内しますので付いてきてください」


 と素っ気無いながらも丁寧な挨拶をするのであった。よく見れば男性に慣れていないのか顔を赤くして若干緊張した様子が見られたため、晃一はもしかしたら人見知りする子なのかもしれないと内心で月子に対する印象を追加した。

 挨拶もそこそこにすぐさま歩き出す月子。親の後を追いかける雛鳥のようにすぐさまトコトコと光もその背に続こうとするが、すぐに晃一の存在を思い出し、その手を取ると


「待ってよルナちゃ~ん。晃一さんのこと置いていってるよ~」


 と特に異性に対する接触を気にした素振りも見せずにその手を引いて歩き出すのであった。

 そして、晃一はというと義妹であり今彼を悩ませている陽菜と年の近い少女からの何気ないスキンシップに先ほどまで身体を動かして頭の中から消えていた彼女のことを思い出してまた、顔が火照ってしまうのであった。

 先頭に月子。続いて光。そして最後に晃一とカルガモの群れのように三人は縦に並んで学院内を歩いていき、手が足りていない生徒たちの手伝いを行っていくのであった。

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