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2 人生の目標が決まりました。

自分赤ん坊になってないか?

これ日本じゃないぞ、から、異世界転生だ!?


と理解することは出来た。割とすぐに。


だからといって納得出来るかはまた別で、疲れ過ぎて夢をみてるんだ、そんなラノベみたいなことがおこるものか。

仕事しないとマズいぞ!起きろ俺!としばらく これは明晰夢説 を自分にプレゼンし続けた。


赤ん坊の身体の作りのせいか、おぎゃー的な声しか出せない。

両親と思われる美男美女が嬉しそうに俺の顔をのぞき込み、何かを語りかけてきて微笑んでいるのを、毎日見ていたら。

なんだかくすぐったくて胸があたたかくなるというか、抱っこされるといい匂いだし安心で気持ちよくて、すぐ意識が飛んでしまう。

寝ちゃうんだなぁ。


...仕事なんてどうでもいいや、これが現実でもいいかなぁとちょっと思うようになった。


ちなみに異世界だと気づいたのは、乳母が猫耳(!)ついた獣人で、屋敷の中にたまに小人妖精が飛んでいたから。

羽根生えてんの。

使用人も犬耳やらなんらかの耳やらしっぽやら生えてて。

そもそも屋敷だの乳母だの使用人だの妙に現実的で、でも日本ではまったく現実的じゃない人達がいるあたりも、はいこれ夢ー、って逆に夢説に説得力増した。



前世の記憶を持ちながら赤ん坊するのは大変かと思ったが、動けないし話せないし、そもそも相手が何言ってんのかわからないしでそう困らなかった。


この世界の言葉で話してるんだからわかるわけないわな。

日本語じゃなかった。まあそうですよね。


あとは、メーガネ家の皆様は、たいそうな親バカ身内バカであったため、


大人しい赤ん坊。

なんていい子なんだ!まるで天使のようだ!


ちょっと話し出すのが早い。

まぁ!天才だわ!きっと神様に愛されているのね!


歩きだすのが早い。

この子には神の加護があるに違いない!


加減しながら、赤ちゃんってこのぐらいから歩くよね?は、話すよねー?

なんてしていたが、大抵は何をやっても神の御加護ですみ、レイモンド天才、レイたん天使!マジ可愛い!ですまされた。

ちょろい家族で助かった。


身体に中身も引きずられてるな、って思うような時もしばしばあったのでそれほど違和感もない子どもでいられたのかもしれない。


歩くようになってからも、足もつれてよくコケたし。

頭、重いんだよ。


言葉そのものを覚えなおしなのもよかった。

赤ん坊はいいぞ。

言い間違えてもみんな笑顔になってくれるし、ちゃんとした単語がいえると天才!可愛い!と褒められるんだ。

子どもは褒められて伸びるね。


聞き取りはそれなり出来たが、話すのは難しかった。

舌がまわらなくて、母様がかあしゃま、父様がとうしゃま、って具合に勝手になる。

中身25歳、そんな自分にあざとさしか感じなかったが、発音出来ないものは仕方がない。

まわりの大人は俺にめろめろだったが。




この夢いつ覚めるんだろう、と異世界で目覚めるたびに考えたが、どうにも岡崎玲の身体で目覚める様子がまったくない。


玲での家族や友達、心配かけただろうな、俺死んだのかな?


転生だろうと思ってるけど、他の可能性もあるんだろうか。

日本では寝てるだけ、とか。


でもやっぱり死んでるとしたら...。


両親、悲しんでるだろうな。


就職してから仕事が忙しくて、ろくに連絡も入れてなかった。

前に実家帰ったの、いつだったろう。


電話ぐらいもっとすればよかったな。


前に仕事が忙しい忙しい言ってた時も、父さん母さん、心配そうにしてたしな。



...親孝行、全然出来なかったな。


落ち着いたらそのうち、なんて思ってたけど、そのうち、はもう来そうもない。



色々と考えて泣いてしまう事もあった。

この身体だと感情に身体が引っ張られてしまうようで、ギャンギャン泣いた。

赤ん坊は泣いても許される。

我慢せずに泣いた。我慢のしようもなかったが。




父さんと玲は本当瓜二つ!と笑う母さん、その横で「当たり前だ、俺の息子なんだから。なぁ?」と笑う父さん。


一人暮らしをしてからは、たまに実家に帰ると俺の好物ばかりたくさん作ってくれた母さん。

帰りにはタッパーにぎゅうぎゅうに詰めて持たせてくれた。

荷物になるからいいよ、なんて言ってたあの時の自分を殴りたい。

家を離れてから、ああしなさい、こうしなさい、とたまに会うとちょっと口うるさくなった母さん。


内容は「くつ下脱ぎっぱなしにしてない?」とか、「たまには掃除機ぐらいかけなさいよ、あなた父さんに似てズボラなんだから」とか、「たまにでいいから、顔みせに帰ってきなね」とか。

心配してくれてたんだと今なら思う。


父さんは、仕事を始めてから少し痩せた俺を見て、「お前、痩せたな~」と眉間にシワを寄せて言ってた。

「これでなんか食え」と、たたんだ諭吉を母さんの見えないところでそっと手に握らせてくれた。

普通の、でも俺にとっては大事な家族だ。心配かけてばかりだった。


会いたいなぁ、ああ、会いたい。


思い出すたび、ギャンギャン泣いた。


こちらの父様母様が、「怖い夢でも見たの?大丈夫だよ」と抱いてあやしてくれる。

さらに泣けてなかなかギャン泣きは止まらなかった。




自問自答を繰り返し。

諦められはしなかったけれど、俺は自分で立ち、自分で離乳食を食べられるようになった頃、やっとレイモンド・メーガネとしての人生を、本当の意味で受け入れられるようになった気がした。


受け入れると、自分の置かれた立場がそれなりに気になりはじめた。


屋敷はそこそこ立派な作りだが、豪奢な印象は受けない。

中世っぽいと言えばいいのか。

そもそも父親も母親も金髪だった。

顔立ちも日本人感ゼロ。

イケメンと美女(儚げ)の両親、正直自分のみてくれも期待していいと思う。

子ども部屋には鏡がなくて、最初に自分の姿を見たのは窓に映りこみでだった。

乳母に抱かれた姿は、赤ん坊姿でもリアル天使。

ふわふわ金髪の碧眼天使。勝利宣言。

使用人がいるのでそれなりの家なんだろうし。

俺の今生、勝利宣言(2回目)


生まれた当時はわからない単語ばかりだったが、成長するにしたがって少しづつ言葉も理解していった。


父様はこの領地を治める領主の家系、つまり貴族の血筋らしい。曽祖父だかが公爵家から出てるとかなんとか。

でも父様やお爺様が爵位を持ってるわけでもないらしいし、どうやらメーガネ家はこの適度な田舎で神父を続けている割とのんびりした気性の血筋で、実際父様にもお爺様にも貴族的な威厳を感じない。

俺には親バカじじバカだったからかもしれないが。


男児で長子、本来神父は世襲制と言うわけではないようだが、跡取りだ、跡取りだと喜ばれていたので、将来の仕事も安定!

父様もお爺様も、よく俺を可愛がりに子ども部屋にくるので、仕事内容的にも忙し過ぎることはないだろう。


ここ大事!超大事!


前世では結婚どころか彼女も作る時間がなく...ホント、時間がなかっただけ!なんだけど!

結果彼女いない歴=年齢であったため、非常に強い憧れがあります。女性に!...あっ!間違い。結婚に!

前世も別にブサメンってわけでもなかった...と思ってたんだけどなぁ。「フツーに優しそう」とか言われて...あれ?それダメなやつ?



母様ぐらいの美人と結婚したいなぁ。

母様、儚げな見た目だけど意外としっかりした性格の元気な人でした。身体つきもしっかりしてました。

出るとこ超出てて、引っ込むとこひっこんでるし。


かあしゃま、おむねこぼりぇそうだよー。


儚げなのに、肉感的。この二つの言葉、同居が許されるんだね。

元気な美人いいよね。俺マザコン入ってるかも知れない。


俺の今生の目標は、安定していて忙しくない仕事、を持って、母様似の美人と結婚する!


玲改めレイモンド、幼心を期待で胸膨らませた。

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