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ピアノコンクール②
授賞式も終わり、僕は会場の外で彩織ちゃんが出てくるのを待っていた。
まだ、人はたくさんいるらしく、写真撮影をしたりしていた。
『結月くん!!遅くなってごめんねー!!』
会場のドアの方から、愛しい人の声が聞こえた。
振り向くと、“真っ白なドレス”を着た彩織ちゃんが立っていた。
「だ…大丈夫だよ…。」
その姿を見た瞬間、僕はおかしくなりそうだった。
胸は、ドキドキしていて周囲の声も遠くに聞こえる…。
『結月くん、顔色悪いよ…。大丈夫…?』
彩織ちゃんの声も聞こえているはずなのに、返事が出来ない。
「…。」
僕の頭の中は、“彩織ちゃんのドレスを血で染めたい”…という想いでいっぱいだった。
『結月くん!!』と彩織ちゃんの大きな声で、はっとした。
「ご…ごめん…。」
周囲を見渡すと、僕達をちらちらと見ていた。
『何だか、様子がおかしかったから…ごめんね。』
彩織ちゃんは、悪くないよ。
悪いのは、僕なんだ…。
Bloodが言っていたように、大切な人を傷付けてしまうかもしれない…とこの時に実感したのだった。