息抜き
Bloodと話したあの日から、1週間が経った。
あれから何も言ってこないのは、きっと僕を気遣ってくれているんだろう…。
『ご注文は?』
彩織ちゃんに、練習の息抜きをしてもらいたくて、喫茶店に誘った。
この喫茶店は、僕のお気に入りの場所だ。
白と黒が主役の内装は、心を落ち着かせる事が出来る…。
『私は、アイスカフェラテをお願いします。』
「僕は、トマトジュースを…。』
あれからの変化は、本物の“血”を飲みたいと思うようになった事。
どうしても我慢できない時には、こうしてトマトジュースを飲んでいる。
『結月くん、トマトジュースなんて珍しいね。』
「うん…。最近、野菜不足だったから飲もうと思って…。」
“本当は、血を飲むのを我慢しているんだ”…なんて言える訳がない。
『体の事、ちゃんと考えてて偉いね!!』
「うん…。そういえば、この間は急に帰ってごめんね…。」
悪い事をしたなぁ…と思いながら、謝った。
『大丈夫だよ…。だけど、少し寂しかったな…。』
彩織ちゃんは、悲しそうな顔をしていた。
いつかまた、彩織ちゃんにこんな顔をさせてしまうのか…と思うと、苦しい。
今はまだ、完全なヴァンパイアではないけど…ヴァンパイアになってしまったら…。
「ごめん…。今日は、ずっと一緒にいるよ。」
『やったあ!!』
ピョンピョンと飛び跳ねそうなぐらい、嬉しそう。
僕が彩織ちゃんといられる時間は、あとどのくらいなのだろうか…。