知らない男の話
急いで家に帰り、部屋まで走った。
『待っていたぞ。』
「はあ…お前、誰だよ…?」
息を切らしながら、それだけ言った。
『俺は、Bloodだ。』
「僕に、何の用なんだ…?」
Bloodって、変わった名前だなぁ…と思いながら、そう聞いた。
『お前は、ヴァンパイアになる…。』
「は…?」
ヴァンパイアなんて、ファンタジー小説の中で出てくるだけだと思っていた。
それを目の前の男は、普通に言っている。
「どうして、僕がヴァンパイアになるんだよ…。」
『お前は、ヴァンパイアに噛まれたんだ。
この間、私の仲間がそう話していた…。すまない…。』
“私の仲間”という事は、こいつもヴァンパイア…?
だけど、見た目は普通の人間に見える…。
「それで、僕をどうするんだ…?」
『俺についてきてほしい…。』
ついてきてほしい…って、無理に決まってるだろ…。
「無理。僕には、大切な人がいるんだ…。」
『お前、最近何か変わった事とかは…あるのか?』
男は、話を逸らすように聞いてきた。
「あるよ。トマトジュースを飲みたくなったり、歩く速さが変わったり…。」
『そうか…。そしたら、早く手を打った方が良いぞ…。いつか、大切な人を傷つけるかもしれない…。』
「どうして、そんな事言うんだよ!!僕は、彩織ちゃんを絶対に傷付けない!!」
『…もし、辛かったら俺を呼べ。』
ヴァンパイアなのに、どうして人間に優しいんだろう…。
「分かったよ…。僕は、柊 結月。」
『良い名前だな…。じゃあ、俺は帰るよ。』
「そういえば、どこから入ってきたんだよ…?それに、頭の中に話しかけてきただろ?」
『ああ…。ドアの前で念じたら、開いたんだ。頭の中に話しかけられるのは、ヴァンパイアだけだ。』
そうなのか…。
鍵をしていても、入れるとはびっくりだ。
「ありがとう…。」
僕がお礼を言うと、Bloodはびっくりした顔をして『おう…。』と言って、帰って行った。
その後僕は、月を眺めながら、ヴァンパイアの事について考えていた。