ヴァンパイアの女王
結月くんの血が入ってくるのを待ちながら、昔を思い出していた。
私は、カイトといられるだけで幸せだったわ。
女王だった私は、自由なんてなくて苦しかった。
そんな時、人間のカイトに出会って救われたのに…。
あのヴァンパイアのせいで、幸せは壊された。
今、その想いを思い出した…。
『お前は、女王を殺して何とも思わなかったのか…?』
アダムさんが、ヴァンパイアにそう聞いている。
アダムさんは、人間だから攻撃が出来ないから…大変…。
早く、助けないと…。
『俺は、人間といる女王が嫌いだった。だから、わざと戦争を起こした。それに、“元人間”も同じくらい嫌いだ。』
『どんな想いで、今まで生きてきたと思うんだ!!俺も、Blackも結月も!!』
『俺には、関係ない。恨むなら、そのヴァンパイア達を恨めよ…。』
そう言って、手に持っていたナイフをアダムさんへ投げようとしている。
『くっ…。Black、行くぞ!!』
『うん!!』
アダムさんと男の子は、走り出した。
「ちょっと、待ちなさい!!」
私は立ち上がって、叫んだ。
今のままじゃ、2人が危なかったから…。
『さ…彩織さん…?』
『くそっ…。戻ってしまったか…。』
『どうして、金色の髪に赤い目…?』
3人共、びっくりしているみたいね。
そう、私はヴァンパイアの頃のマリーに戻ったの。
「よくも、結月くんを…。絶対に、許さない!!」
走り出して、相手が怯んだ内にナイフを奪った。
「お前なんか、死んでしまえ…。」
そう呟きながら、ヴァンパイアを刺した。
『ぐっ…お前…なんか…』
刺されて、力なんて残っていないくせに…。
結月くんの痛みを分からせてあげる…。
「さようなら…。」
ナイフを抜いて、また刺した。
『くそっ…こんなはずじゃ…』
そう言いながら、ヴァンパイアは倒れて動かなくなった。
『さ…おり…さん…。』
アダムさんは、呆然としながら私の名前を呼んだ。
「アダムさん、こんな所を見せてしまって、ごめんなさい…。」
『びっくり…しただけですよ…。今は、早く結月に血をあげないと…。』
『僕も、あげる!!』
「うさぎさん、ありがとう。あなた、あの男の子だったのね…。」
『うん!!早くしないと…!!』
『俺も、血を授ける。Black、さっきのナイフをくれ。』
『うん。』
アダムさんは、人間でしょ…?
そう思いながら、アダムさんを見ると、目が赤かった。
『アダムさん…。あなたも…?』
『そう…。今の俺の名前は、Blood。くっ…』
アダムさんは、自分の腕を傷付けて、真っ赤な血を結月くんの体へ入れた。
「私も…あげるわ。カイト、待ってて…。」
ナイフをアダムさんから貰って、腕へ切りつけた。
切った瞬間に、血が溢れ出す。
そこに口をつけて、血を含んで結月くんの口へ入れた。
「カイト…好きよ…。だから、生き返って…。」
どうして、前世の名前を呼んでしまうのか…自分で分からなかった。
その時、声が聞こえた。
『…う…ん…。』
死んでしまったはずの結月くんの声が、聞こえたの。




