どうして…?
「結月くん…!!」
私は、大切な人の名前を一生懸命に呼ぶ。
どうして、私なんかを庇ったの…。
『元人間は、大した事ないな…。』
元人間…?
さっき、結月くんを殺した赤い目の男は、ため息をつきながらそう言った。
「…元人間って、どういう事よ…?」
『彩織ちゃん、結月はヴァンパイアなんだ。僕もだけど…。』
さっき、黒いうさぎさんだった男の子は悲しそうにそう言った。
この子、アダムさんの親戚だって言っていた子だわ…。
今は、それどころじゃない…。
結月くんを助けないと…。
『結月!!』
どこからか声が聞こえて、声がした方へ目を向けたら、アダムさんが急いでこっちへ来ていた。
どうして、アダムさんが…?
『彩織さん!!結月は…どうしたんですか…?』
結月くんを抱きかかえて、血で染まってしまった私の服を見ながら、アダムさんは聞いてきた。
『俺が、殺したんだよ!!その女を先に殺したかったんだが…。次は、お前の番だな…。』
『お前…。どうして、この子を殺す必要があるんだ…?』
「私が…ヴァンパイアの女王だったの…。」
『彩織さんが…?』
「はい…。アダムさん、結月くんを助けて!!」
私は、泣きながらアダムさんへ言った。
『彩織さん…。』
アダムさんは、悲しそうに私を見ていた。
『鬱陶しいな!!』
ヴァンパイアは、新しいナイフを出して私へ向かってきている。
もう、あの方法しかない…。
そう思った私は、結月くんに刺さっていたナイフを抜いて…自分の心臓へ刺した。
『さ…彩織さん!!』
『どうして…?』
アダムさんと男の子の声を聞きながら、私は結月くんの上に倒れた。
それを見ていたヴァンパイアは、びっくりしていたけど…笑っていた。
『ははは…。自分で死んでくれたなんて、仕事が1つ減ったな。次は、元人間のお前を殺そうか…。』
このヴァンパイアは、バカね…。
私が、自害したと思っているなんて…。
そんな事を思っている内に、結月くんの血が私の体に入ってきている。
アダムさん、もう少し…待ってて…。
助けてあげる…。




