僕達の前世②
『カイト…。』
彩織ちゃんも、前世の記憶を思い出したらしい。
『俺は、この女を殺したヴァンパイアだ。本当は、お前を殺したかったんだが…。』
目の前のヴァンパイアは、不満そうに言った。
『だけど、結月達は何もしていないじゃん!!』
Blackが大きな声で、そう言った。
『お前は…うさぎのヴァンパイアだな?』
『そうだよ!!お前みたいな奴らに、ヴァンパイアにされたんだ!!』
彩織ちゃんは、Blackを見てびっくりした顔をしている。
『そうか…。お前の隣にいる人間も…』
そう言いかけた所で、僕は大きな声を出した。
「それ以上は、やめろ!!」
『さっきから、話が逸れてしまった。まずは、この女を殺す。』
どこからかナイフを出して、彩織ちゃんに刃先を向けた。
「やめろ!!」
僕は、走り出してヴァンパイアに体当たりをした。
『結月!!』
僕を呼んだBlackを見ると、人間になっていて、彩織ちゃんをヴァンパイアから離れた位置に移動させていた。
『何で、邪魔をするんだ!!』
僕に掴みかかってきて、牙を向けてきた。
また、あの日みたいになりたくない…。
「くっ…。僕は、普通に…彩織ちゃんといたいんだ…!!」
腕を掴み、思い切り振り払った。
『それなら、お前を先に殺す!!』
『結月くん!!』
彩織ちゃんが、僕の名前を心配そうに呼んでいて、こっちへ向かってきそうだ。
「彩織、こっちに来るな!!」
『あの日殺せなかったんだ…。殺してやる!!』
ナイフを振り上げてきた相手を交わしつつ、彩織ちゃんがいる方を見る。
『もう、やめて…。』
そう言って、こっちへ向かって走ってきた。
そして、僕達の間に入ってきて、こう言った。
『殺すなら、私を殺しなさい。結月くんは、関係ないわ。』
『話の分かる女じゃないか。』
嬉しそうにヴァンパイアは、彩織ちゃんへナイフを突き付けようとしている。
止めなくちゃ…そう思った僕は、目を瞑っている彩織ちゃんの前に立った。
『結月ー!!』
『えっ…?』
彩織ちゃんがそう言った時には、僕にナイフが突き刺さっていた。
「くっ…。」
『結月くん!!』
「さ…おり…ちゃ…ん…。」
泣いている彩織ちゃんの涙を拭いながら、僕は倒れた。
倒れた地面は、草むらだった。
緑色の草は、どんどん赤く染まっていった。




