僕達の前世①
僕が悩んでいると、そのヴァンパイアはこう言った。
『この女は、前世が…ヴァンパイアの女王…。生まれ変わって、人間になった…。』
「えっ…。」
彩織ちゃんが、ヴァンパイアの女王だった…?
『結月くん…。』
彩織ちゃんは、僕を見て名前を呼んだ。
「どうして、そんな事を言うんだ…?証拠なんて、何もないだろう…。」
きっと、このヴァンパイアは嘘を言っている…。
『証拠は、見せてやるよ。』
ヴァンパイアは、指を空へ向かって鳴らした。
その後、僕の頭の中に“何か”が流れ込んできた。
『マリー、好きだよ。』
『カイト、私も…好き。』
若い男女が2人で、幸せそうに笑っている。
その女の子は、金色の髪に赤い目をしていて、どこか彩織ちゃんに似ていた。
一方、男の子は茶色の髪に黒い目をしていた。
その後は、何故か街は荒れていて人間が争っていた。
『人間とヴァンパイアは、共存出来ない!!』
人間同士で争っていたのではなく、人間とヴァンパイアが争っていた。
『マリー、僕はキミを守るよ。』
『駄目よ!!私がヴァンパイアじゃなかったら…カイトといられたのに…。』
2人で、誰もいない場所で話していた。
『殺してやる!!』
どこからか声が聞こえて、見ると男の子が殺されそうになっている。
『やめてー!!』
女の子は、男の子を庇って刺されてしまった。
「はっ…はっ…。」
また、上手く息が出来ない。
だけど、今は倒れる訳にはいかない。
それに、この次の言葉を僕は知っている。
この次の言葉は、きっと…“生まれ変わったら、人間になりたい。また、会おうね。”だったはず…。
『カイト、生まれ変わったら…人間になるから…待ってて…。その…時、また会おう…ね…。』
『マリー!!』
死んでしまったマリーを抱きしめながら、僕は泣いていた。
その後、僕は落ちていたナイフで自分を刺して…死んだ…。
「マリー…。」
『やっと、思い出したか…。』
そのヴァンパイアは、ニヤリと笑っていた。




