キミの家②
しばらく待っていると、彩織ちゃんが話し出した。
『結月くん、今度のピアノコンクール…来てくれる?』
ピアノコンクール…彩織ちゃんは、小さい頃からピアノをしている。
彼女が奏でる音色は、聴いている皆の事を引き込んでしまうぐらい素敵だ。
大学の中でも、1番上手だと思う。
僕には、そんなに出来る事はないから…少し羨ましい。
「その日は、講義もないから大丈夫だよ。」
僕と彩織ちゃんは、同じ大学に通うくらいの仲でもある。
『ありがとう!!結月くんが来てくれると、いつもより頑張れるの!!』
「そんな事ないよ…。」
照れてしまい、そんな事しか言えなかった。
『アイスコーヒー、出来たよ。』
「ありがとう。」
ちょうど、喉が渇いていたから美味しいなぁ…と思いながらアイスコーヒーを味わっていると、頭の中で声が聞こえた。
“今日、お前に話がある。家で待っているぞ。”
その声は、知らない男だった。
大体、頭の中に話しかけてくるなんて…おかしいだろ…。
『結月くん、どうしたの…?』
顔を上げると、心配そうに僕を見ている彩織ちゃん。
「何でもないよ…。ちょっと、用事を思い出したから…帰るね。ごめん…。」
『そっか…。また、連絡してね。』
「うん。」
その時の僕は、男の事で頭がいっぱいで、彩織ちゃんが悲しそうな顔をしているのに気付いてあげられなかったんだ…。