本当の想い
何を話そうか悩んでいたら、彩織ちゃんが口を開いた。
『結月くん、今日の講義は?』
「今日は、何もないよ。彩織ちゃんは?」
『私も、何にもないの。朝早くに、ごめんね…。』
「ううん。」と言いながら、彩織ちゃんの隣に座った。
『昨日、アダムさんと話があるって連絡をもらった時…本当は悲しかったの…。』
ポツリ…と彩織ちゃんは呟いた。
まさか、僕がヴァンパイアなのを知ってしまったのだろうか…と内心焦ったけど、次の言葉を聞いて、胸が苦しくなった。
『結月くんが、どこかに行ってしまうんじゃないか…って思ってしまったの…。』
下を向いて、悲しそうな顔をしている。
今すぐ、抱きしめたいけど…僕は…ヴァンパイアだから…出来ない…。
「ごめんね…。」
『ううん…。』
顔を上げた彩織ちゃんは、泣いていた。
泣いている顔を見たら、気持ちが抑えられなかった。
『結月くん…!?』
僕は、彩織ちゃんを抱きしめた。
本当は、いけないけど…あんな顔を見てしまったら…駄目だった。
「本当に、ごめん…。僕は、どこにも行かないよ…。」
僕の理性がある限り、彩織ちゃんの傍を離れたくない…。
昨日、Bloodがシャーロットさんを見ながら、後悔していたのを見たからなのか…そう思った。
『結月くん…。』
彩織ちゃんは、僕の口元でそう呟き、キスをしてきた。
僕も目を閉じて、彩織ちゃんの事だけを考えた。
今だけは、血を飲みたい欲求がこない事を祈りながら…。




