危険な夜②
『お前は、あの時の…』
「…誰だよ…?」
僕の前に現れたそいつは、僕を見ていた。
『お前の腕を噛んだヴァンパイアだ。お前を殺しに来た。』
「どうして、いきなり殺されないといけないんだよ…。」
『人間のヴァンパイアは、殺すんだよ!!』
と大きな声でヴァンパイアは、言った。
「ここで叫ぶなよ…。向こうに、行くぞ…。」
彩織ちゃんに、こんな場面を見せる訳にはいかない…。
『…分かった…。』
あっさりとそのヴァンパイアは、了解してくれた。
意外に素直なんだな…と思いながら、人が来そうにない空き地へ向かった。
空き地に着いた途端、僕は叫んだ。
「ヴァンパイアにされて、迷惑しているのはこっちだ!!血を飲みたくなったり、人を傷付けたいとか…思いたくない!!」
『お前は、死なないといけない運命なんだ。あの女もな…。お前がいたら、殺せないから、先にお前を殺す。』と言って、僕に向かって走ってきた。
どうしよう…と思いながら、ナイフを回避する。
『ラチがあかないな…。』
ヴァンパイアは、イライラしてきているみたいだ。
僕は、ナイフを蹴って飛ばした。
「よし…!!」
『くそっ…。』
ナイフを飛ばされたのを見て、僕に掴みかかってきた。
気が付いた時には、押し倒されていた。
「なっ…。」
牙をのぞかせて、僕に噛み付こうとしている。
このままでは、殺されてしまう…。
必死に抵抗していたら、手に何かが当たった。
「…?」
それを手探りでとり、見たらさっきのナイフだった。
下手したら、手がきれてたかも…。
ヴァンパイアの顔が、僕の首に近付いてきた。
しょうがない…。
ナイフで、腕を刺せば…やめるだろう…と思い、思い切り刺した。
『ぐっ…』
「はぁ…はぁ…」
『お前、俺に…何をした…!?』
「僕を殺そうとするから、腕を刺し…た…んだ…。」
あれ…?上手く話せない…?
ヴァンパイアは、腕を抑えながら、僕を睨んでいた。
「…。」
僕は、もう何にも考えられなかった。
だって、“赤い血”を見たんだから…。
『な…何をするつもりだ…。』
ヴァンパイアは、慌てながら逃げようとする。
「お前なんか、死んでしまえ…。」
僕は、ナイフをヴァンパイアの心臓に思い切り刺した。
『ぐはっ…』
相手は、血を吐いて倒れた。
「喉…渇いたな…。」
フラフラと歩きながら、死んでしまったヴァンパイアの近くへいき、血を飲んだ。
「美味しい…。」
今の僕は、おかしい…。
彩織ちゃんが見たら、きっと泣いちゃうだろうな…。
そう思いながら空を見上げると、赤い月が僕を照らしていた。




