似ている人②
昔、よく彩織ちゃんと遊んでいた公園を通り過ぎた時、あの日を思い出していた。
『結月くん、このお花良い香りがするよ!!』
『そうだね。これは、金木犀って言うんだって、お母さんが言ってたよ。』
彩織ちゃん、金木犀の事…好きだよな。
最近、この公園に来ていないから…また連れてきてあげたいな…。
小学校以来に通った公園は、あの日の甘い香りがしていた。
『結月、大丈夫か…?』
僕を心配して、Bloodが振り返ってきた。
「大丈夫だよ。あと、どのくらいで着くの?」
『もう少し先に、森への入口がある。その中に、いる…。」
公園を通り過ぎて、何もなくなった…。
代わりにあるのは、たくさんの木ばかり。
その中を怪我をしないように進んでいると、木で出来た家がポツンと1軒立っていた。
「この家は…?」
『ここに、似ている人がいる…。2階にいるはずだから、上に行かないと…。』
上に行くって、どうやって…?
こんな所、よじ登る訳にはいかないし…。
「どうやって…?」
『俺が、結月を持ち上げて連れて行く。』と僕をヒョイと抱えて、飛んだBlood。
いきなり、怖いよ…。
「なっ…ちょっと…。」
『着いた…。』
Bloodは、僕の声なんか耳に入らないみたいだった。
Bloodが見ている場所は、窓ガラスの向こうにいる女の人。
具合が悪いのか、ベッドに横たわっている。
ちょうど、顔を僕達がいる方へ向けているらしい。
その人を見て、僕は目を疑った。
髪の色が違うだけで、彩織ちゃんそっくりだったから…。
「Blood…。」
『彩織さんは、似ているんだ…。俺の大切なシャーロットに…。』
シャーロット…?Blackが言っていた、Bloodの大切な人…なのか…?
『ゴホッ…ゴホッ…、アダ…ム…。早…く、迎え…に…来て…よ。』
『シャーロット…。』
「Blood、シャーロットさんは…。」
『俺のせいで、病気になってしまった…。』
「…。」
僕は、何にも言えなかった。
『俺の過去を、話そう…。』と下をむいて、Bloodは話し始めた。
具合が悪いシャーロットさんを見るのが、辛いからなのか…僕には分からなかった。




