似ている人①
今日受ける講義が終わり、僕は帰る準備をしていた。
『あの、結月さん…。』
僕を下の名前で呼ぶのは、ここではBloodぐらいだ。
前を向いた僕は、やっぱり…と思った。
「どうしたんですか?」
今日は、彩織ちゃんを誘って帰ろうと考えている。
『ちょっとお話したい事があります…。』と下を向いて言うBlood。
さっきから、様子がおかしいなぁ…と思いながら、返事をする。
「彩織ちゃんも一緒かもしれないけど、良いですか?」
『それは、ちょっと…。』
2人きりじゃないと話せない内容なら、しょうがない…。
彩織ちゃんには、連絡しておかなきゃな。
「じゃ、彩織ちゃんに連絡しておきます。」
『ありがとうございます…。』
早速、メールを送った。
“今日は、アダムさんと一緒に帰るので、迎えに行けないんだ。ごめんね。帰り道、気を付けてね。”
5分も経たない内に、返信が来た。
“大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう。私の事は、気にしないで。”
『やっぱり、良い人だな…。』と隣にいたBloodが呟いた。
その顔は、さっきと同じで悲しそうだった。
それに、話し方が変わったな…。
周りを見渡すと、僕達だけになっていた。
「うん…。Bloodは、彩織ちゃんの事…好きなの?」
さっきから、気になっていた僕は聞いてしまった。
『違う…。』
「遠慮しないで、大丈夫だよ。Bloodなら、彩織ちゃんを傷つけないと思う…。」
僕は、何を言っているのだろう…。
だけど、大切なBloodが悲しい顔をするのは、見たくないんだ。
それに、彩織ちゃんも…その方が幸せかもしれない…。
『彩織さんは、似てるんだ…。』とBloodは苦しそうな顔をして言った。
「似てる…?」
誰に似ているのか、僕には見当もつかない。
『行くぞ…。』
そう言って、僕の腕を掴んで歩き出したBlood。
「Blood、どこに行くの…?」
『着いたら、説明する…。』
そう言って、黙ってしまった。
彩織ちゃんが、誰に似ているんだろう…と思いながら、Bloodの背中を見ていた。




