屋上①
天体学部から遠ざかり、美術部の前の廊下へやって来た僕。
ここの学部は、画家になりたい人、学校の美術の先生になりたい人がいるみたい。
今日は、大きなキャンバスに絵を描いているらしく…絵の具の香りがしていた。
僕が描く絵なんかより、立派だなぁ…と見ながら歩いていたら…また“あれ”が襲ってきた。
「はあ…はっ…。」
こんな所で、出てしまったら…大変な事になってしまう…。
その正体は、絵の具を出すパレットにあった赤い絵の具だった。
Bloodが言っていた“発作”は、この間より強く感じられた。
これ以上、出ないように血を飲みたい想いを我慢しながら…屋上まで急いだ。
階段が見えた時は、足をひきずりながら…昇り、重い扉を開けた。
屋上には、Bloodが先に来ていたらしく…明らかに様子が違う僕を、心配そうに見ていた。
『結月、大丈夫か…?』
「血を…飲みた…い。」
僕の口からは、その言葉しか出なかった。
他の事は、何も考えられない…。
立っているのがたまらなくなって、座り込んだ。
『何か…見たのか…?』
「赤い…絵の具…。」
さっきの“赤”を思い出すだけで…もっと喉が渇いた。
『絵の具さえ、出てしまうとは…。
俺の血を飲ませる訳には、いかないし…。
どうしたら良いんだ…?』
「はあ…はあ…。」
このままだと、Bloodまで傷付けてしまうかも…しれない。
『ちょっと、待ってろ…。』
そう言って、『Black、今すぐ来てくれ!!』と空へ向かって叫んだBlood。
この時の僕は、意識がほとんどなかったから…何が起こっているのか…分からなかった。




