秋の編入生②
教室に向かっていると、クラスメートの橘に声をかけられた。
『柊、おはよう。あれ、知ってるか?』
「おはよう。何を?」
Bloodの事かなぁ…と思いながら、聞くと、興奮したように説明し出した。
『編入生だよ。この時期に珍しいよな…。
すごく格好良くて、髪の毛は明るい茶色で…目も青いみたいだぜ。』
「その人なら、さっき会ったよ。」
『えっ、マジで!?』
「うん。道を聞かれたよ。」
橘も、背が高いし、人の事気遣えるし…格好良いと思うけど…。
そんな事を2人で話していたら、僕達の学部の前で『キャー!!』という女子の歓声が聞こえた。
その中心にいるのは、Bloodだった。
女子に囲まれて、色々質問されているみたい。
『どこから来たんですか?』
『電話番号、教えて下さい!!』
『名前は?彼女は、いるんですか?』
その光景を見ていた橘が、呟いた。
『あんな風に、いきなり色々聞かれるのは…嫌だな。』
「うん…。」
Bloodを見ると、笑顔で女子の質問に答えている。
だけど、その笑顔は…本物ではないと思う。
『俺は、アダムです。彼女は、いないけど…大切な人はいます。アメリカに住んでいて、日本に天体の勉強をしに来ました…。
電話は、まだ来たばかりで…ありません。
ごめんなさい。』
『そうなんですかぁ…。』
『残念だなぁ…。』と女子達は、言っている。
『じゃ、俺はこれで…。』
Bloodは、そう言って僕達がいる方へやってきた。
まだ、僕に気付いていないらしい。
皆の前で話しかけると、大変な事になりそうなので…頭の中で話しかけようと決めた。




