何かの予感
「彩織ちゃん、危ないよ!!」
『大丈夫だよ。結月くんは、心配しすぎだよ。』
僕が心配しすぎじゃなくて、彩織ちゃんが危なっかしいんだよ…。
小さい頃から彩織ちゃんは、そういう所がある。
それに、どうして“危ない”を連発するのか…。
まだ何も起こっていないけど、何か起きそうな予感がするんだ。
『空の色がおかしい…。』
僕の隣にいた、谷口 彩織ちゃんはそう呟いた。
僕も空を見上げると、さっきまでは雲一つない秋日和だったはずなのに…今では雨が降りそうな程、黒くなっていた。
久し振りに、外でデートだったから残念だけど、しょうがない…と公園に咲いている真っ赤なヒガンバナを見ながら、思っていた。
「早く帰ろう!!」
僕は、彩織ちゃんの手をとり急いで走り出した。
走っていると、僕達の前に何かが現れた。
『帰る前に、その女をよこしな。』
見た目は、人間っぽいけど…目が異常に赤くて歯も尖っているし、危ない人に見える。
「嫌だよ!!お前なんかに、渡すもんか!!」
彩織ちゃんは、僕が守ってみせる!!
『しょうがない…。それなら…。』と言って、そいつは彩織ちゃんに向かって走ってきた。
僕は、急いで彩織ちゃんを抱き締めた。
彩織ちゃんを奪えない事が分かると、そいつはどこかへ行ったように見えた。
僕は、油断していたんだ…。
『結月くん、危ない!!』と彩織ちゃんの大きな声が聞こえた。
気付いた時には、右腕を噛まれていた。
「くっ…。」
噛まれた部分が痛み出して、出血もかなり多いみたいだ…。
僕の服の右腕の部分が、真っ赤に染まっていた。
それを見ていたそいつは、ニヤニヤしながらこう言った。
『人間は、大した事ないな…。』
僕は、その一言に怒り、噛まれた右腕で力一杯殴った。
相手もダメージを負ったらしく、『覚えていろよ!!』と顔を抑えながらどこかへ飛んで行った。
「…はあ。」
『結月くん、腕大丈夫…?私のせいでごめんね…。』
「彩織ちゃんのせいじゃないよ。腕は、痛いね…。彩織ちゃんは、大丈夫…?」
『うん…。急いで手当てしなくちゃ!!
私の家まで、大丈夫?』
「うん。ありがとう…。」
彩織ちゃんは、きっと怖かったはず…。
だけど、僕の心配をしてくれて…嬉しい。
彩織ちゃんの家へ向かい、手当てをしてもらった。
「じゃ、今日は帰るよ。彩織ちゃん、大丈夫…?」
彩織ちゃんは、さっきからずっと悲しそうな顔をしている。
そんな顔は、見たくないよ…。
『結月くん、ごめんね…。』
「僕は、大丈夫だよ。」
『結月くん…。』
「じゃ、またね。」
『バイバイ。』
彩織ちゃんは、ニコッと笑ってくれた。
僕は、彩織ちゃんといられるだけで…幸せだよ。
これから、何が起こるのかも知らずに…僕はそんな事を思っていた。