当たり前の日常
「ハァ…ハァ……ハァ」
8月中旬、秋の訪れを感じさせない炎天下模様。
その暑さが自身の体力をジワジワと削る。
音を立て軋むペダル。頬を伝う水滴。
風を全身で受けながら彼は全力で走り続ける。
「また遅刻か、中川ぁ。早く座れ。」
「へい。」
席に腰掛ける、クラスメイトの視線を周りに感じる。
鞄を開け、中を見る。…やば…弁当忘れた…
「今日はついてねぇな…ハァ……」
昼休み、売店で弁当の代わりのパンと、大好物のコーラを残り少ないはした金で払う。
教室に帰ろうと玄関前を通過しようとした時に妙な気配を感じ、その場で足を止め小さくなる。
黒いローブを纏った人間二人が校長室へと真っ直ぐ向かって行った。
学校関係者じゃないことは一瞬でわかった。
罪悪感に狩られながらもドアの隙間から盗聴することにした。
会話の途中から盗聴を始めたというのもあり、最初の方の会話は聞こえなかったが、
「殺すぞ?…オッサン。」
徐ろに取り出された銃の存在に校長、自分も怯んでいた。
『いきなりか!?』
知らせなければと走りこんだ瞬間、踏み込んだ足にパンの袋が当たり「カサッ」と小さな音がなった。
しかし、この緊迫の状況下の中、その小さな音は奴の耳に届くには十分すぎる音量だった。