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序章

第■■■■■号

■■■■■年■■月■■日


大学共同運営法人自然科学研究管理機構

機構長 ■■ ■ 殿


第一次超長期刑確定者団超常現象調査報告書


超長期刑確定者団

団長 ■■ ■■■■■■

(公印省略)


1. 報告前文

第一次超長期刑確定者団超常現象調査報告書(以降,本報告)は,■■の■■に伴う恩赦により結成された超長期刑確定者団員の手記に基づく.本報告の文体および構成は「書類が突然ライトノベル風になる」現象(C3IN4-2577628-37.以降,甲)の影響により変質したものであり,原本とは異なる.甲により,体裁が乱れる部分が生じているが,てめーらはよまねえだろうからそのままだ。


2. 「人が燃える」現象

 オズが人の燃える様を見たのは、今生で三度目だった。最初は両親、次は同僚。そして今度は部下のそれだった。

 高浜は軍から配属されたばかりの工作担当武官で、生じていたのは「触ると遅くなる」現象(C3IN0-4163715-07)だった。

「ボクシング全階級王者にでもなろうか、なんて思ったりもしましたが、スポーツはやるより見るのが好きなんです」

 成人にしか見えない顔で中学生らしいことを言っていた時には、まさかこんな動きを人に見せつけて逝くとは思っていなかっただろう。

 高浜の身体はゆっくりと焼かれ続け、太い悲鳴とともに明々と踊った。白、赤、黒、青、色とりどりの光で夜空を照らす。燃やせるものが無くなった後には、ふたまわり縮んだ塊と、ピエール・ブロス社の電気狙撃銃しか残らなかった。

 残っただけマシか。前の三人は灰にすらなれなかった。

「ドーチェ・オズ、第三作戦の準備できました」

 周囲を伝わる振動に混じって、微かな声が聞こえる。オフィサー・李はこんな時でも動揺を感じさせない。それは結構なことだが、スティーブンソン神父の教え子は何か苦手だ。ネグ神父やサスト神父のそれとは雰囲気が全く違う。

 余計なことを考えている暇はなかった。すぐに指示を出さなければ。

「了解です。第三作戦、行動開始どうぞ」

「了解。行動開始」

「ケイリンもです。行動開始を」

 後ろで目頭を押さえているもう一人の部下に言う。

「……了解しました。行動開始します」

 さて、大きな損失はあったが、撤退する訳にはいかない。「人が燃える」現象(C3IN0-4161391-08)は、今も観測範囲を不規則に拡大している。その中心にいるのは、黒づくめの歌う少女たちだ。煤けたフードからわずかに覗く顔立ち。年は十二、三歳ごろだろうか。遺伝子バンクに該当するデータはなく、聞く機会もないので、わからないままだろう。

 今回、オズはいつものジャック・ローズ・マリー社の連装榴弾拳銃ではなく、ターカー社の徹甲突撃銃を構成した。

 顕世した歓びからか、銃身が脈打ち、銃口は吠える。信仰はまだ浅いが、確実に発火の障壁を越えられるのはこれしかない。

「後先立たさず、悔いろ」

 銃に霊を喚ぶ。降りたのは思考者メテウスだ。炎魔アイマインによる現象への干渉も考えたが、拳銃の方に馴染みすぎており、降りてこない可能性があった。

 早速、6.16ミリC1弾の弾倉を装填し、照準器を覗く。照準器の眼球が膝の辺りに狙いを定めたのを確認し、銃口を床に向けて、銃架の足に自立させる。全ての指の爪が剥がされているのをみるに、機構に潜入を試みた工作員が素材なのだろう。

 一息おいて横になぞるように銃口を動かして撃つ。

 撃ち出される徹甲弾には、本来ならあり得ない回転が加わり、更なる加速を生む。降霊時の公称時速1,240キロ、地上マッハ1。その反動を耐えきれる個人など一握り。だが、今回は耐える必要などない。メテウスの識能により、引き金さえ引ければ誰でも当てられる。

 少女たちの膝が弾け飛ぶ音がする。ぶち、ぐちゃ、めきぉ、ぼん。

 後でミルの連中に怒られるのが確定した。

 続けて部下が突撃する。ケイリンの装備はサンダルス工房の粒子銃剣付き五丁拳銃、李はバレンタイン社の針弾軽機関銃だ。

 少女の輪の中心にうずくまっていた黒ずくめの少年は、瞬く間に針の山となり、斬り刻まれ、血だまりとなった。

 すぐに通信で現象が収束した旨が伝わってくる。

「収束確認。生体を回収します。収集整理部員、行動開始。オフィサー・李、回収の監督を。ケイリン、警察との折衝を」

「収集整理部では死体の回収はできないはずです」

「わかっています。ケイリン、私物の死体袋を借りられますか」

「はい。今日は余りがあるので、私が回収しておきます」

「ありがとう。折衝を代わります。完了したら撤収です」

「了解」

「了解しました」

 回収された彼女たちは生命維持処置を受け、競り落とした各ブランドの工房で生きたまま解体される。そして、その肉体から、新たな銃が作られる。神霊を召喚するためには、生きた人間が素材でなければならないからだ。

「生体と銃の回収完了」

「死体を二名分回収完了しました」

「では撤収。後は警察がやります」

 到着と展開から三十分。日付が変わる前に何とか遂行できた。オズは、血痕と灰とローブの残骸しか残らない廃屋を見渡し、十字を切ってから外へ出た。

 残念ながら、外の天気は晴れだった。

オチは考えてありますが、それ以外ほとんど何も考えずに書いています。

某ミームっぽいのは偶然です。本当に。

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