最終幕・パンドラの第四倉庫
お盆休み特別企画作品
「痛った、たたたた・・、ここは・・」
沙織がおしりを撫ぜている。
「ここが本当の“第四倉庫”よ」
美紗が手に持ったろうそくに火を灯した。他の三人も尻餅を付き周りを見渡している。そこは数人入れば一杯になるような小さな部屋だった。
「此処は昔、防空壕だったの。それを先代の先輩たちが見つけ私達の秘密の部屋にしたの」
美紗がゆっくり語りだした。
「私達・・?」
沙織が首を傾げた。
「そう・・、私達、『オカ研』の秘密の倉庫にしたのよ」
美紗がゆっくり歩き出し周りを照らした。そこには束にして括ってある"白いもの”が沢山あった。
「こっ!これは!」
翠がひとつの束を取り驚いた。それは歴代の通知簿だった。恐る恐る封印を解くように紐を解いてゆく。最初の一枚を開いてみると数字の“2”がずらりと並んでいる。次の一枚も、その次も。四人は一斉に全部の通知簿を開けていった。
「あっ、アヒル!」
沙織が叫んだ。
「あっはははは・・!思い出なんて美化などされないわ!これが現実なのよ!私達の宿命なのよ!」
美紗は腹を抱え四人を指差して笑っている。四人は無我夢中で必死に全ての通知簿を開いている。そこに急に突風が吹き起こり通知簿が宙を舞った。四人は一枚でも多くの通知簿を取ろうと大きく腕を伸ばしている。そして通知簿は四人の目の前を回り始め目が回り、四人は床に倒れこんだ。
「はははははっ・・・・」
その様子を美紗は苦しくなるほど笑いこけていた。
翌日・・。
いつものように朝から蒸し暑い日差しが照りつけている。窓を開けた教室には少しだけ生暖かい風が吹き込んできている。四人はひと時だけその風に気持ち良ささを感じながら仲良く机を並べ補習を受けていた。
「結局、昨日の晩は何だったのかしら・・」
綾乃が雲を掴む顔で言った。
「たぬきに化かされたのよ・・」
由香が眠そうな目で気だるく言った。
「美紗先輩って本当にいるのかしら・・?」
翠が大きなあくびをした。
「呪文を唱えるって言ってたけど、唱える暇も無く強引に倉庫の中に引きずり込まれたわね。それって何故だったのかしら・・」
綾乃が小さな疑問を抱いた。
「それわぁ~・・。ちょっとした諸事情よ・・」
沙織がその疑問に答えた。なぜか・・、この物語の内部事情に詳しいらしい。
「だけどあれが私達の宿命って御免だわ・・」
沙織が頭を抱えた。四人とも補習授業など耳には入っていない。
「諦めないで!未来は私達の力で変えていくものよ!なんとか先生の顔も立って『オカ研』も続きそうだし。今度は次のシリーズで挽回するわ!」
翠が大きな声を張り上げた。
「ちょっと!あんた大丈夫。誰に向かって言ってんのよ!・・で、シリーズって何!」
沙織が翠の体を押さえ止めた。
「あーぁ、取憑かれちゃってるわ」
由香が翠を眺め気だるく言った。
「まぁ、とりあえず今は夏休みを楽しみましょ」
綾乃がマイペースで言った。
「そうよね。夏休みは始まったばっかりだし、補習が終わったらみんなで市民プールに繰り出しましょ!」
翠がシャーペンを天高く翳した。
「いやっほー!!」
夏の暑い日差しが四人を元気付けるように眩しく照っていた。・・・おわり
短期間でしたがご愛読ありがとうございました。
◎New Age Beginning
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