第三幕・夜の学校。(後半)
お盆休み特別企画作品
「ようやく体育館に来たわね・・」
四人は床に座り込み大粒の汗を掻き体で息をしている。
「あんたが大人数の変なもの連れてくるからこんな目にあったんじゃない!」
沙織が翠に息切れしながら言っている。
「何よ!なにもいなかったわ!変な気配もしなかったし!」
翠もぜーぜー言いながら言い返している。
「鈍感なのよ」
「感覚が麻痺してます」
由香と綾乃も目が虚ろになりながら翠を攻撃した。
「私がトイレ行ったから悪いって言うの!仕方ないじゃない、どんな時だって出ちゃうものは出るんだから!」
翠は頬を赤らめ言った。
「まぁ、いいわ。もういなくなっちゃったし。肝心要の“第四倉庫”を探しましょ」
沙織は深呼吸をして言った。
落ち着いて体育館を見渡すと、薄暗くガラーンとしている。
「なんだか今日此処で終業式があったって思えないくらい殺風景ね」
沙織は暗闇に慣れてきた目できょろきょろしている。
「体育館って使っている時はそうは思わないけど、何も無いと広いわね」
翠も同じように隅から隅まで目だけ動かして見た。
「特に今は私達四人だけですもの。当然広く感じて当たり前です」
綾乃は高い天井を見ていた。
「まるで倉庫よね・・」
由香が気だるくぼそっと呟いた。
「待って!今なんて言った!」
翠が由香の方を向き聞き返した。
「『あんたの体が汗臭い』・・って言った」
「失礼ね!そんな長い台詞言って無いでしょ!“倉庫”って言ったわよね!」
「聞こえてんじゃん!」
「そうよ!この体育館自体が幻の“第四倉庫”よ!」
翠と由香の痴話喧嘩のなか沙織が割り込んで入ってきた。
「倉庫っていっても何にもないよ・・」
綾乃が不思議な顔をして言った。
「あるわよ。たくさん。卒業生達の思い出でいっぱいよ。全て学生生活のスタートは此処から始まるの。春には入学式でしょ。そこで初めて此処の空気に触れ新しい仲間と出会うの。そして体育の授業に音楽会や発表の場などの学校の行事に参加して、そうそう身体測定っていうのもあったわね。春夏秋冬、年がら年中、学校中の学生達がみんな此処を使っているのよ。この体育館の雰囲気に溶け込み、匂いを感じ、頭の記憶に残ってゆく。そして最後に卒業式で締めくくる訳よ。ね、思い出がいっぱいでしょ。私達もまだまだこれから思い出を作って体育館というこの倉庫にしまいましょ!」
沙織は立ち上がり手を広げ舞い踊っている。
「そうかもしれないわ。美しい話よねぇ」
翠はじーんと胸から込み上げてきている。由香も綾乃もひったっている。
「そんなありきたりな感動話なわけ無いでしょ!」
体育館の扉の方から聞いた声がする。
「美紗先輩!」
四人が声を上げた。そこには扉を開けて制服姿の美紗が立っていた。
「私は言ったでしょ。体育館の何所かにあるって!体育館そのものが倉庫な訳ないでしょ!“第四倉庫”はあなた達が座り込んでいる床下よ!」
そう言って美紗が指を指した途端、床が崩れ落ち四人は転落していった。・・・つづく
いよいよ明日、最終回!
謎の第四倉庫で驚愕の事実が明らかにされる!乞うご期待!
◎New Age Beginning
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◎CloverQueens
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