第二幕・洋館にて・・。(後半)
お盆休み特別企画作品
3階でエレベーターが開くとそこはちょっとした一流ホテル並みの廊下が広がっていた。
「こっちよ」
美紗がひとつのドアの前で手を振って呼んでいる。
「先輩はどうやって此処まで私達より早く上がってきたのかしら・・」
綾乃が不思議がった。
「余計な事考えないの!」
沙織は美紗に苦笑いを浮かべながら小声で舌打ちした。
美紗の部屋に入るとそこにはあらゆる人形が所狭しと飾られていた。
「あなた達が来てくれて皆喜んでいるわ」
美紗は飾られている人形達を撫ぜていった。
「うゎ、この日本人形!髪の毛伸びてる!」
沙織が自分の側に置いてある日本人形を見て驚いた。
「お菊ちゃん・・。その娘、いやらしいから直ぐ髪の毛が伸びるのよ・・」
美紗は人形達を撫ぜながらスローペースな口調で言った。
「は、ははは・・・」
沙織は笑うしかなかった。
「先輩は人形が好きなんですね。人形集めが趣味なんですか・・」
綾乃が恐る恐る質問した。
「私の趣味は『ひとりかくれんぼ』よ。この人形達はその儀式に使うの・・」
美紗は遠くを見つめ答えた。
「はっ、ははは・・。そうなんですか・・・」
綾乃は背筋にぞくっとした寒気を感じつつ笑って納得せざるはなかった。
「見つかったことあります?」
由香がその話題を伸ばし聞かなくてもいい事を聞いた。
「彼は見付け方が下手だから、まだ探し当ててくれないの・・」
美紗の目は焦点が合っていない。
「はっ、はは・・。彼・・・」
由香は笑いながら聞いた事を悔やんだ。
「ところで先輩。私達の学校で七不思議な事あります」
翠がようやく聞きたかった事を聞いた。他の三人は翠を楯に影に隠れている。
「そうねぇ、“トイレの花子さん”とか・・?」
美紗は日本人形の“お菊ちゃん”の髪を研いでいる。
「いや、全国区のメジャーなものじゃなくて、うちの学校のオリジナルなものです」
翠の体中に他の三人がしがみ付いている。
「えっ、いるのよ・・。花子さん・・。だけど、そうねぇ・・、この学校だけのもので言えば・・、“第四倉庫”かしら・・」
美紗は“お菊ちゃん”の髪を剥いている。
「“第四倉庫”・・!」
四人はその響きがいい言葉に食いついた。
「私もよくは知らないんだけど・・、前にいた私の先輩が言っていた話よ。その倉庫には見てはいけないもの・・。知ってはいけないもの・・。が、あるか、いるか、しているらしいの」
美紗は“お菊ちゃん”の髪を整えた。
「それでその倉庫は何処にあるの・・」
四人は一緒に身を乗り出した。
「体育館にあるらしいわ・・。だけど、見つけたら呪文を唱えないとその扉は開かないらしいの・・。その呪文はね・・・」
美紗は歩く気配も見せず、すーっと四人に迫ってきた。四人は恐怖に駆られつつ興味心身だ。
「お待たせ。ケーキとお茶持ってきたわよ」
おぼこい母親がアニメ声で急にドアを開けた。四人は腰が抜けている。
「はい、どうぞ。おや、五人じゃなかったかしら・・」
おぼこい母親は四人にケーキとお茶を並べながら、さらっと気味の悪いことを言った。四人は背筋にぞーっとする嫌な寒気を感じた。
「みんな食べましょう」
美紗は早速既に食べている。
「いま喋ったのは誰!」
由香が小声で気だるく聞いた。
「余計な事聞かないの!」
翠は美紗に苦笑いを浮かべながら一口食べた。
「なんだか体がだるぅーい・・」
「私も眠たくなってきたわ・・」
「おやすみなさぁーい・・」
「ぐぅぐぅ・・・」
四人は重なるように深い眠りに付いた。
最初に沙織が目を覚ました。
「みんな起きて起きて!」
沙織は他の三人を揺さぶり起こした。
「ここどこぉー」
由香が目を擦りながら聞いた。
四人は芝生の上で寝そべっていた。夕方の夏の軟い日差しが差していた。
「どうしたのかしら・・、私たち・・」
翠が寝ぼけながら聞いた。
「まさか、たぬきに化かされた・・!」
沙織がたぬきの親子を思い出した。
「あっ!あれ見て!」
綾乃が指差す方向に体育館があった。・・・つづく
全6話。15日まで毎日更新。
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