第二幕・洋館にて・・。(前半)
お盆休み特別企画作品
夏のギラギラ輝く太陽が空の天辺に居座る蒸し暑い昼下がり。四人は“幽霊部員”の先輩の家に向けて樹海のような森の中を歩いていた。
「いま季節って夏だよね・・」
沙織が震えながら言った。
「肌寒すぎるわ・・」
翠は凍えている。
四人は真夏の昼だというのに薄暗く冬のように寒い山道を進んでいた。
「・・って言うか、これ獣道だよ!」
由香が気だるい声を張り上げた。
「あっ!たぬき!」
綾乃が指差した先にたぬきの親子がいた。
「化かされるわよ!」
翠は歯をガタガタいわせている。
「化かすのはキツネでしょ」
沙織の唇が青くなってきている。
「たぬきもキツネも同類よ!」
由香の顔に霜が出来て固まっている。
「ところで眠くなってきたわ・・」
翠があくびをした。
「こんな所で寝ちゃいけません!雪山の睡眠は死を意味します!」
綾乃はうとうとしながら翠を振り起こした。
「あんたの方が先に逝くわよ・・。で、雪山じゃないし・・」
翠は綾乃を振り起こした。二人はうとうとしながらシェイク状態だ。
「あれを見て着いたわよ」
沙織は真っ青な顔で震える指先でそれを差した。そこには高い策の向こうの小高い所に古めかしい洋館が建っていた。
「どちら様ですか」
インターホンから女性の声がする。
「遭難しました!開けてくださーい!」
四人が一斉に大声を出した。
策の門の向こうから砂煙を上げスポーツカーが猛スピードで走ってきた。
「いらっしゃいませ。ご案内いたします」
運転席には無表情のメイド姿のお姉さんが座っていた。
四人はあっけらかんとした顔になった。
「ここから屋敷の玄関まで距離があります。さぁ、美紗お嬢様がお待ちです。早く乗ってください。凍え死にますよ」
そのお姉さんは淡々と機械じみた電子音の様な声で答えた。四人は目を点にしたまま車に乗り込んだ。
「シートベルト締めてください」
そのお姉さんはギアをトップに入れアクセルを踏み込んだ。タイヤがフル回転で砂煙を上げ、けたたましいエンジン音と共に車は洋館に向かい走り出した。
間近で見るとその洋館は西洋の古城の様だった。大きな玄関の扉が開くとおぼこいおばさんが出迎えてくれた。
「美紗のお友達が来るなんて初めてだわ。さぁ、上がって」
美紗の母親であろうそのおばさんはアニメ声で嬉しそうに四人を招いた。
「お邪魔しまーす」
四人は声を揃えて言った。玄関を上がると大きな広間が有り広い階段が広がっていた。
四人は場違いな場所にそわそわしていた。
「いらっしゃい」
広い階段の壇上から美紗の声がした。四人が顔を向けると着物姿の美紗が立っていた。
「こんにちは先輩。お着物似合ってます」
翠が美紗を見上げて言った。
「ありがとう・・。死に装束よ・・。私の部屋は3階だからそこのエレベーターで上がってきて」
美紗はそう言って慎ましやかに立ち去った。
「・・・、え、えっ、エレベーター!」
四人は美紗の言動に固まったが、我に返りまた声を揃えて驚いた。・・・つづく
全6話。15日まで毎日更新。
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