王子、御告げ
「本当かい?」
リファエルは「ええ」と頷く。
「占星術に詳しい青年がいるのですが。白髭の老人と二人暮らしで赤い瞳の持ち主です」
兄のことはよく知らない。相手も俺のことを知らない。いや、王家の人間しか俺の存在を知らない。失踪中の兄に殺されるかもしれないので、国王就任式に初めて俺が公の場に出るのだ。
「そういえば、占星術を勉強しにルシフェニアリテ王国に行くらしいと聞きましたが。ちょうど一週間後だったかしら?」
何故、そんなに詳しいのか疑問だが、これは大切な情報だ。
「私もルシフェニアリテ王国に留学するので。ちょうど一週間後に」
リファエルは笑った。
「本当はお散歩じゃないのです。ルシア様にさよならを言いに来たんです」
リファエルは髪飾りを外し、髪飾りを俺に渡した。
「戦争が起きるかもしれない緊張状態、帰ってこれるのか分かりません。その髪飾りを見て時々私を思い出してください」
リファエルは一気に喋り終えると走って行ってしまった。話すことは沢山あったのに、何も言えなかった。王子(一応)のくせに情けない。
「王子、神からの御告げでございます」
宰相のリシュラが急いだ様子でやって来た。
「どうした?リシュラ」
「王子と王子の兄上様は大きな戦を起こし、兄上様に敗北するでしょう…。とのことでございます」
「御告げなどに頼るなど情けない。そのようなことどうでもよい」
リシュラは「申し訳ございません」と頭を下げた。
占星術師に負けてたまるか…