反逆者、王子が生まれた
逃亡して長い月日が流れたらしい。
育ての親、長老様は最近元気がない。
「ベリアルガ、すまないのう。未来の王子だというのに…。こんな貧しい生活をさせてしまって…。」
丸い小さな背中が嗚咽混じりに揺れ動く。
「長老様、泣かないで下さい。僕は長老様に育ててもらって嬉しいです」
長老様の背中を撫でる。
「生活は貧しくても、僕の心は豊かです」
占星術で未来を占うこと、長老様と散歩すること、長老様と一緒の食事、村の友達と一緒に歌うこと…全て僕の心の栄養だ。
「ルナ、優しい子に育ってくれたのう。孝行息子じゃ」
照れくさくて、小さく「いえ」と言った。
「長老様〜、ベリアルガ〜、お散歩しましょう」
可愛らしい女の子の声が僕と長老様を呼んだ。
「さて、行くかのう」
僕と長老様は家を出た。
外にはアリアとアリアのお祖父さん(名前はリー)がいた。リーさんと長老様は昔からの友達らしい。
「リーさん、こんにちは」
「こんにちは」
リーさんは優しそうに目を細めた。
「長老様、こんにちは」
「こんにちは、アリア」
アリアは可愛らしく笑った。
アリアは僕の一番仲良しの友達。とても美人で優しくて好奇心旺盛。アリアに一番仲良しの友達だと言うとアリアは怒るから、最近は一番仲良しの友達と言っていない。
「私最近ね、お城の人たちに声をかけられたの。ルナ、何とかっていう人を探しているんだって。てっきり、お姫様になれるのかと思った」
アリアはいたずらっぽく笑う。が、僕と長老様は笑えない。僕はルナ・ザレスタではなく、ベリアルガ・ステンダレストという偽名を使っている。このことは長老様と僕だけの秘密で、誰も知らない。リーさんとアリアにも内緒。
「それにね、国王様と王子様にも会ったのよ」
「王子様?」
アリアは「うん」と頷いた。
「私と同い年。ベリアルガの一つ下よ。王子様もルナ、何とかを探しているんだって」
新しい未来の国王が生まれた…。
「ベリアルガ?」
アリアは僕の顔を覗きこんだ。
未来の国王が生まれた…
未来の国王が生まれた…