1/5
反逆者、生まれる
「神の御告げは…」
セリヌは長老に尋ねた。さっきから、長老は白くて長い顎髭をなでながら言葉を濁すばかりだ。
「はやく、我が王国を託す我が息子の未来を!輝かしい王国の未来を!」
そう言われるとますます長老は言いづらくなる。
「国王…」
しわがれた長老の声が広間に低く響きわたる。
「何だ、はやく言うが良い。息子も王妃もはやく聞きたがっておる」
セリヌの言葉に王妃が頷く。王妃の腕に抱かれる幼き王子を見て長老はため息をつく。長老のため息にセリヌは怪訝な表情を浮かべた。
「国王様、神の御告げはどんなことでも決して外すことなどございません」
長老は死を覚悟で御告げを言う。
「王子、ルナ・ザレスタは将来国王様を殺めるでしょう。そして、国王様へ復讐するでしょう」
王妃は悲鳴を上げた。幼き王子は王妃の腕に抱かれ、眠っていた。
「や、奴を捕らえよ!」
セリヌは兵士達に命令をした。
死を覚悟したものの、長老は王妃の腕に抱かれた王子を奪い、逃走した。
―この子を育てなければ…、あの国王に殺されてしまう―
長老は闇夜を駆けた。