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灰の谷の灯火  作者:


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8/13

光と瘴気の衝突

巨獣が村へ向けて踏み出した瞬間、

地面がドンと震え、舞い上がった土埃が空気を濁す。


「前衛、構えろ!!」


狩人の隊長が叫ぶと同時に、

十数名の男たちが盾を前に突き出し、東門の前で壁を作った。


レオン兄さんはその一歩前に出て、剣を構えた。


僕は兄さんの背中のすぐ後ろ。


(怖い……でも、逃げない。絶対に)



◆ 巨獣の突進


巨獣の赤い目がギラリと光り、

次の瞬間――


ズドォォォォン!


黒い霧を撒き散らしながら突進してきた。


「くるぞッ!!」


レオン兄さんの声と同時に、前衛の盾が一斉に構えられる。


巨獣の体当たりは――

まるで“山”がぶつかるような衝撃だった。


ガッ……ギギギギッ!!


盾が軋み、地面が削れ、狩人たちが後ろへ押し返される。


「ぐ、うおおおっ!!」


「下がるな! 踏ん張れ!!」


兄さんが剣を振り下ろし、巨獣の前脚に斬りかかる。


だが――


ズバッ!


剣は、瘴気の膜に触れた瞬間、煙を上げて弾かれた。


「何だ……こいつ……!」


兄さんの目が鋭くなる。


「ユウト! やっぱり“浄化”が必要だ!!前脚の瘴気膜を消せば、攻撃が通る!」


「うん!」


 


◆ ユウトの浄化・初の“戦闘使用”


僕は胸の奥に集中し、光の膜を広げようとした。


(深く、狭く……でも“届く”距離まで)


手を前にかざした瞬間――

巨獣の前脚に触れそうな光の膜が、ふわりと広がった。


ジュウゥゥ……!


膜が瘴気を焼き、黒い霧が弾ける。


狩人たちが驚きの声を上げた。


「な、なんだあれ……光だ……!」


「瘴気が消えていく……!」


レオン兄さんが叫ぶ。


「今だッ!!」


兄さんの剣が再び振り下ろされる。


今度は、剣が瘴気に弾かれなかった。


ザシュッ!


巨獣の前脚から黒い血が飛び散る。


巨獣が咆哮し、のけぞった。


グオオオオオオオッ!!!


「やった……!!」


僕の胸に一瞬、喜びが生まれた。


しかし――その瞬間だった。



◆ 巨獣の異常な能力


ブワァァァ……ッ


巨獣から黒い霧が一気に噴き出した。


「え!? さっきより濃い……!!」


レオン兄さんもすぐに異変を察した。


「ユウト、離れろ!!」


叫ぶ声の直後、巨獣の身体の周囲に“渦”が生まれた。


黒い霧がぐるぐると回転し、まるで……“吸い込んでいる”みたいに見えた。


「……瘴気を……集めてる……?」


長老が震えた声で呟く。


「違う……“奪っている”のじゃ……!周囲の瘴気だけではない! 地面、生き物……すべての“力”を取り込んでおる!!」


その言葉の意味が脳裏に突き刺さる。


(力を奪う……!?)


巨獣の足元で、草や小石が黒く変色していく。


狩人の一人が叫んだ。


「こ、これ以上近づいたら……吸われる!!」


レオン兄さんが僕の肩を引き寄せ、必死に叫ぶ。


「ユウト! 不用意に近づくな!これはただの魔獣じゃない……瘴気核が“成長”してやがる……!」


巨獣の赤い目がこちらを向く。


その目は先ほどより、さらに濁り、深く、

まるで“誰かの怨念”が宿ったような赤だった。


◆ 村人が危険に晒される


突然――


「きゃああああああっ!!」


村の後ろから、女性の悲鳴が響いた。


巨獣の霧の一部が後方へ吹き飛び、

避難していた人たちの方へ流れていく。


「やばい……!」


僕は思わず走り出した。


「ユウト! 待て!!」


兄さんの声が聞こえたが、

脚はもう止まらなかった。


(あの霧が村人に触れたら……!)


胸が叫んでいた。


(助ける!!)


◆ “範囲浄化”の限界突破


僕は飛び込むように霧の前へ立ち、両手を広げた。


「広がれ……! もっと……!!」


胸の奥から、これまでで一番強い光が噴き出した。


バッ……!


空気が一気に押しのけられるように震え、霧が光の力で焼かれ、弾き飛ばされる。


村人たちが息を呑む。


「光だ……! ユウト君が……!」


「霧が消えていく……! 本物の“浄化使い”だ!」


僕は奥歯を食いしばりながら叫んだ。


「大丈夫……もう、誰にも触れさせない……!!」



……しかし。



光が広がりきった瞬間、

僕の視界がぐらりと揺れた。


「……っ!」


膝が崩れかける。


(まずい……力を使いすぎた……)


その瞬間――

巨獣がこちらへ向けて大きく口を開き、


ゴウッ!!!


黒い弾丸のような瘴気を吐き出した。


それは、真っすぐ僕へ向かって飛んできた。


逃げられない。


「――ユウトォォォッ!!!」


レオン兄さんの絶叫が響く。

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