家族の勇気、そして新たな門出
封印の扉が揺れ、赤黒い光が脈打つ。
影の手が隙間から這い出た瞬間、地下区画全体に強烈な冷気が走った。
「くるぞ――全員構えろ!」
慎也の号令とともに、家族は一斉に身構えた。
学院長バルムの杖が青く輝き、封印陣へ魔力を流し込む。
「時間を稼いでください! わたしが封印を固定する!!」
「任せろ!」
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◆ ◆影の王・降臨
扉から溢れた影が集まり、人型の“黒い王”の姿へと変わっていく。
《■■■■■……》
その声は言葉の形をしていないのに、人の心を直接揺さぶる。
「こいつ……昨日より強い!」
蓮が歯を食いしばる。
影の王は手をかざし、無数の“影の槍”を生成した。
「リナ、来るよ!」
真緒が盾を展開する。
――バシュッ! バシュッ!
影の槍が真緒の魔法盾へ突き刺さり、砕けた影が霧のように広がる。
「お母さん、下がって……“光糸”!」
リナの放った光の糸が影の王の腕を縛り――しかし、すぐに焼き切られた。
「くっ……まだ私の魔力じゃ足りない……!」
「リナ、焦るな」
慎也が彼女の頭にそっと手を当てた。
「ここから先は、家族で行くぞ」
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◆ ◆家族の連携
「蓮、右から回り込め! 真緒は前衛防御! リナは後衛支援だ!!」
「了解!」
「はいっ!」
「任せて!」
影の王の周囲を、家族が三方向から包囲する。蓮が足下に雷の魔法陣を展開し、一気に加速。影の王の胸へ拳を叩き込む――!
――ドッ!
黒い霧が吹き飛び、影の王がよろめいた。
「今だ、お父さん!」
慎也が跳び上がり、刀に全魔力を注ぐ。
「うおおおおおっ……!――《光刃・一閃》!!」
眩い光が闇を切り裂き、影の王の体が真っ二つに割れた。
暗闇が苦しげに震え――やがて、霧となり崩壊していく。
《……■■■……家族……“絆”……か……》
最後にそう呟き、影の王は完全に消滅した。
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◆ ◆封印の修復
学院長バルムが深く息を吐きながら言った。
「……すごい。まさか本当に《幽影種》を撃退するとは……。君たちは間違いなく、勇者の名にふさわしい家族です」
「いえ……家族みんながいたから戦えただけですよ」
慎也はそう答え、家族の肩を順に叩いた。
封印は学院長の魔法で完全に修復され、学院に再び静寂が戻った。
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◆ ◆エピローグ ― 新たな日常へ
事件から三日後。王都が平穏を取り戻し、学院では新学期が始まろうとしていた。
「お父さん、今日から学院で特別講師だって?」
蓮がニヤリと笑う。
「ああ、断ったんだけど……なぜか王様から直接頼まれてな」
慎也は苦笑する。
「私は学院の図書館の補助員になれました!」
リナは胸を張る。
「私は……家族を守るために、もっと魔法の研究をするわ」
真緒は微笑む。
学院の門をくぐる家族の姿を見て、学生たちのざわめきが広がる。
「あれが勇者一家……!」
「学院を守ったって噂、本当なんだ……」
慎也一家の新しい日常が、今ようやくスタートした。
異世界で“家族一緒に生きる”という奇跡。
それは戦いの日々の中でも決して変わらず、
そしてこれからも続いていく――。




