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異世界転生ファウスト〜馬車に轢かれて知性無双または異界転生論争の幻視〜ホームズ  作者: ヨハン•G•ファウスト


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4/8

第四幕:転生者または転移者ファウスト、村娘に会う

やあ、君。物語を聴くのは楽しい。

でも、素直に聴いてもらえたら、ボクとしてはありがたい。好き勝手に言えるからねーー。


第三幕では、ホームズから指摘されたことをすべて無視し、主人公ファウストを異世界に送る事にしたワトソン。

彼は物語をどのように進めていくのか......。


ベーカー街の下宿の221Bの過ごしやすい居間。向かい合うようにして、ソファに腰かけた二人は、長く見つめあった。

「で、主人公のファウストは、どこに放置するんだい?」とホームズはワトソンに聞いた。

「森の中だ。近くに村があるーー」とワトソンは言った。

ホームズはうなづいた。ワトソンは言葉を続けた。

「そこの村娘がファウストを見かけて、怯えるんだ。彼は知らない人だからね。それで逃げようとしたらーー彼女の目の前にクマが現れるんだ。魔物のクマだ。彼女よりも三倍も大きい。そいつは二本足で立ち上がって、吠えるんだ。彼女が喰われそうになった。

ファウストは、手をかざしファイアを唱えて、魔物の注意を逸らすーー」

すると、ホームズが優しくワトソンの会話を止めた。

「まだ試したことのない魔法を放った時点で、ファウストは彼女を殺したかもしれない。ーー今のでわかった。彼の知性は働いてない。もしくは限定的だ。」

ワトソンは口をあんぐりと開けた。


「話の流れには矛盾がない。馬車に轢かれた彼が、再び同じことを繰り返した。見事だよ。だが、キャラクターが不味い。すでに完璧な身体から主導権を奪われて、反射的な行動に従っている。知性は身体の奴隷となったーー」

ホームズはスラスラと話し始めた。

まるで、推理を披露しているようだった。

「もっと話してやりたいが、

続けたまえーー」とホームズは途中で打ち切った。

「彼女は、ファウストの魔法によって救われた。一か八かだった。」

「反射的な行動だ。そんな事は考えられないさ。気づいたら撃ってたーーそうだろ」

「彼女は救われた。ファウストは命の恩人だった」

「彼に顔や森、そして村を焼かれても恩人と思えたかな?」

「ーー少女はお礼がしたいと村に誘った。ファウストは少年のような笑顔で、誘いを受けた。」

「不審者が何をしようとも、村には絶対に誘わない。この村娘の常識は、なるほど、異世界なんだろうなーー」

二人はしばらく微笑みあった。


「ホームズ。少しは黙って聴く気がないのかい?」とワトソンは微笑んだ。

「ワトソン。もう少し考えてから書こうぜ。こんなの考えつくヤツらの尻を片っぱしから、蹴り上げた方がマシだ。おい、こんなの世間に読ませるな。衝動的な事件が多くなって、知性を磨けなくなる」

「ーーファウストは村に歓迎された。

彼は村の人たちの大切な村娘を救ってくれたんだから。」

「その大切な娘を一人でうろつかせた奴らは、彼女を気にしちゃいないさ。」

「村の人たちは優しかったーー」

「彼らが大切にしているのは、目の前の不審者をどう始末するかだ。村を守らなきゃならない。ーー魔物を魔法で撃退できる危険人物だ。慎重になる。」

「それでも、村の人たちは彼に家を用意した。」

「油断させるためだ。いざとなれば、家ごと燃やせるから。きっと仕込まれている。油や藁が近くにあるさ」

「それは別の用途だ!」とワトソンは立ち上がった。


「それで、ファウストはどうなったんだい。」とホームズは言った。

ワトソンは落ち着いて、ソファに深く腰を沈めた。

「ーー村の一員として、色々やろうとしたけど。彼にはもっと別な仕事があった」

「村の役に立たなかったんだーー」

「違う。彼にはもっと重要な仕事が振られた。魔物を撃退する仕事だーー」

「化け物に化け物をぶつけた。なかなか頭の良い連中だぞ。ファウストよりも知性が働いてる。おだてて、こき使うんだ。」

「違う。そうじゃない。適材適所だ。村の人たちは非力だったから。」

「本当に非力な連中なら、そんなところに村は作らない。ファウストの知性は働いてない。完璧な身体は頭に血が通ってない。んーーまてよ。ファウストは転生者だったな。」とホームズはワトソンに顔を近づけた。

「なぜ、彼は離れた家族や友人を気にしてない?」

「違う。彼は、気にしてた。村に溶け込もうとがんばったんだ。

なんで気にしないって思ったんだ?」

「ーー元いた世界を気にしてたら、何も手につかないのでは?」

「彼は、彼はそんなに弱くないーー」

「おい、ワトソン。正直に言えよ。彼は元いた世界に興味はない。だから、すんなり受け入れた。情のないヤツだ。少年を馬車から救ったのも、反射だ。考えてない。おい、美徳の前提が崩れたぞ?」

二人は、また黙った。

ワトソンは顔を下に向けて言った。

「彼はコミュニケーションを取るのが難しかったかもしれない。」

「ーーなら溶け込むのはムリだ。

何度やろうとも失敗する。

ーーなお悪い。彼には王の身体がある。負け犬のくせにーー」

ワトソンは下唇を強く噛んだ。、

「ーーある時、村に大蛇が現れた。デビルサーペントだ。村の人たちは焦った。それは、村を取り囲むほどの大蛇だったーー」

ワトソンは、ゆっくりとホームズを眺めた。


(こうして、第四幕は大蛇により幕を閉じる。)

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