表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生ファウスト〜馬車に轢かれて知性無双または異界転生論争の幻視〜ホームズ  作者: ヨハン•G•ファウスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

第二幕:死の定義と完璧な身体

やあ、君。異世界転生ものは好きかい?最強の自分を想像するだろ?

でもーーそいつぁーー本当に君の能力なんだろうか。借り物なんかで、誰よりも上に感じるのはーー


第一幕では、推理作家をやめる事にしたワトソンが、世間を楽しませようと新ジャンルに手を伸ばそうとしていた。それが『異世界転生ファウスト〜馬車で轢かれたら知性無双〜』さ。

女神から渡された鋭い知性を武器に異世界で無双して、多くの試練を乗り越え、たくさんの美女と共に幸せを掴むという物語なんだ。


そのアイデアを、シャーロック・ホームズに感想をもらってた。

それが地獄の始まりとも知らずにね。

なんとホームズは、この主人公ファウストが破滅すると予言した。

青ざめるワトソンーー。

ホームズは何を語るのだろうか?


ベーカー街の下宿の221Bで二人は向かい合って話した。

外は明るく気持ちの良い朝だ。

だけどワトソンの心は、暗く落ち込んでいた。


「ホームズ。冗談はよせ。

ファウストはイケメンになった。」

ワトソンは少しだけ自分の身体を確認してみた。そしてホームズの、足の長さを見たんだ。

「元は中肉中背の男で、彼は少しばかり顔も悪かったかもしれないが、

女神によって鋭い知性を手に入れたんだ。」ワトソンはホームズを見つめた。

「それに魔法も使える。ボクらの羨む状況だ。なんでも思いのままだ。」

ワトソンは恨みを込めた目でホームズを見た。

「それに君とは違って、ファウストはいいヤツだ。命をかけて、子どもを守った」とワトソンは目をつぶって涙を一筋流した。彼は自分に酔っていた。

「馬車に轢かれてね。犬死にだよ」とホームズはワトソンに自己陶酔の時間を一切与えなかった。

ワトソンは激しく動揺した。

「ホームズ!彼は自己犠牲の英雄だ。侮辱は許さないぞ」とまでいった。

「やれやれ、ーー女神は彼の美徳で褒美を与えたんだ。ーーそうだね?」とホームズ。

「そうだともーー」とワトソン。

「彼が、その美徳を完全に失った後でも?」とホームズにニヤついた。

「どういう事だ......。彼は何も変わっちゃいないぞーー」とワトソンは言い返した。

「いいや、変わったさ。」ホームズはワトソンにわかりやすく伝えた。

「彼の死の定義は上書きされた。

ーーこれは致命的だ。彼は二度と誰かのために命を投げ出さない」

「ーーなんだって?」とワトソンの顔がピキった。彼は凍りついたんだ。


「もともと僕らは”死んだら終わり”という事を知っている。これは覆せない。誰も終わりの先を教えてはくれない。だからーー命を大事にする」とホームズは説明した。

「ーーそうだ」とワトソンは震えた声になった。

「彼は、ファウストは記憶を持ったまま異世界に転生したんだね?」

「ーーそうだよーー」とワトソン。

「それに、鋭い知性を持っているから。彼は知ってる。ーー自分がもう、まともに戻れないって事を。」

それを聞いて、ワトソンは下唇を噛んだ。


「次に彼はーー身体の問題も抱えている。」とホームズは言った。

「彼の身体は完璧だ。若くて、美しく、鋭い知性をおさめておくのに相応しい。どこに問題がある?」とワトソンは声を荒げた。

「そこが問題だよ、ワトソン。

完璧なのが問題だ。考えてもみたまえ、ファウストは不完全な肉体に魂を今まで宿していた。それが、完璧な肉体になんか宿ってみろ。混乱が起きる。負け犬の魂と完璧な身体には、超えられない壁がある。こんなに違いがあると、君、ヤバイぜ。」

ホームズは顎を撫で始めた。

「魂は身体の欲望に流される。

ーー確実にね。

つまりーー自制が効かなくなる。

欲望ーー本能に忠実になる。

欲しいものは、手に入れなきゃガマンもできない。まるで子どもだ。」

ホームズのニヤニヤがワトソンの神経を刺激した。

「美徳も失い、自制心も危うくなった。負け犬が王の体に乗っている。コッケイだーー」


(こうして、第二幕は負け犬の魂で幕を閉じる。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ