最後の審判
「ここまでがこの星の過去と現在の真実です。」
「…」
「引き続き、ソライシについて説明をして行きます」
「…」
「ソライシとは、現実的であり、抽象的な存在です。形は一応あり、此方で用意して随所補充していますが、その物の本来の意味は抽象的です。例えるなら人の拠り所とする物です」
「?」
「人間が生まれた時には備わって居ません。成長して行く過程で其々に生み出され、形成されて行く物の象徴で、思想、指針、信念、ヨスガの様な物です。」
「例えばこれで誰かに認められたいと言うような欲求の元、この様に行動して生きて行きたいと言った自発的な信念、自分にとって一番大切な思想、人を慈しむ愛、自分にしか無く人より優位だと思える為の理由、それら生きて行ってから経験などを積んで人から生まれてくる其々の異なった価値や本質などの総合的なモノです。」
何となく分かったが、そう言う抽象的な物って形として表せるんだろうか?と言う疑問も湧いた。
しかし、もうここまで色々知らされて来たので何でもアリだと思っていた。
「そのあらゆる人から生まれたいわば人の根底の様な物を求め、執念を持って集められる人には実験体の中でも優秀な個体で、より人間に近いのでそれなりの報酬を与えました。沢山集めた人のデータを分析して新たな実験体も作って来ました。」
「その中でも、真実を知りたいと言う人には『完全な人間』として施術して欠損等も修復し、遺伝子も正常に組替え、普通の寿命にします。今はそう言った元実験体が数名月に移住しています。」
成る程…それで塔に入った人は帰ってこなかったのか…
「今は最終プログラムに入る所で、丁度あなたでこの形の施術もあの星の実験も終了となります。」
運が良かったのか俺…
最終プログラム…?
「あの塔の本来の目的、使用方法を説明します。あの塔は電波塔であり、最後の審判を下す執行役です」
「…?」
「あの塔から最終プログラムが執行されて、実験体のみに作用する電磁波が流れます。そして実験体は全て消滅します。その後月にいる人類が徐々に移住してきます」
まさに地獄の審判だ…
「最後にあなたに質問です。あなたは『完全な人間』になりたいですか?なりたく無いですか?なりたく無い場合はあなたを元の世界に戻します。その代わり、ここで知った記憶を全て消します。あなたはあの世界で何のストレスも不安もなく、幸せに短い寿命を全う出来ます。あなたの勇気と努力に報いる為、最終プログラムは発動せず自然消滅を待ちましょう。」
「俺は…真実を忘れたく無い…たとえこの先不幸や困難があっても、自分の意思で生きて行きたい!」
「了承いたしました。それではこれからあなたに『完全な人間』になっていただきます。」
「ハイ…」
「施術前に にあなたにはあなたの真実を見つめ直して頂きます。」
最初に説明された言葉を再び言われた。