皆が恐れていた事
「このステーションは、この星から見えない月の裏側に建設されています。今はこの星はちょっとした月旅行に行けるようになっていますが、このステーションの存在を知られない様に滞在時間や、宇宙へ行ける場所も厳しく決めています」
それで、月旅行があんな形なのか…と納得した。
「この星は隕石の影響と、最後まで武器などで対抗しようとした国の影響で放射能などの大気汚染と生態系もほぼ破壊され壊滅的となり、長い年月自然治癒を待ちました。」
「そこで調査を続けてきて漸く今から回復プログラムを開始できると言う段階になり、スタートさせました」
荒れたこの星に小型探査機が着陸していて、小さな緑の芽が出ている所を撮影している映像が流れた。
「最初に大気の改善の為、大型の宇宙船で上空から酸素の元になる物質を定期的に放出しました。」
映像でこの星の上空から大きな宇宙船で何かを放出させていた。その宇宙船から無数の光が放出されていて、ああ、これがこの星の伝承のスタートだったんだなと理解した。
「それからまた長い年月を経て、次の段階に移り月と同じ形態のドームを数カ所建設して、試験的に色々な条件を試す事になりました。」
映像にドーム状の物が転々と建設されていた。
「ドームの中に小さな国になる様に水や緑を生やし、やがて以前のこの星に近い状態にしました。」
ドームの外側はまだ剥き出しの土や岩が見えていた。
「そこから色々なタイプの人類を人工的に作り、どの様に生きていけるか試験して行きました。それぞれ何かしら欠損させたり遺伝子交配で、人類以外の物と組み合わせた物も作りました」
そこで今の俺達が見慣れてる人間達が映し出された。
ミルハみたいに何かの獣が混ざっているものや、タオみたいにツノが生えてるものもある。
「やはりこう言った作られた人類はどうしても寿命が短く、完全な実験とはなりませんでした」
その言葉を聞いても、やはり俺は心が欠けているせいか、そんなにショックや悔しい気持ちにならなかった。
「中の環境も以前の星の様に天候、気温などを定期的にコントロールし、配給する食料も最低限の栄養素は必ず入れるようにしました。長生き出来ないので無駄なストレスは与えない様にしました。形だけの生殖器はありますが、生殖機能は無くしています。予測不能の繁殖を防ぐ為です」
本当に実験体…ラハタも言ってたが飼育されていたんだな…
「実験結果から総合的に概ね人類が生活出来るだろうと言う結論となり、月に避難していた元々の人類がこの星に帰ってくる計画が進んでいます。」
「なら…俺達…作られた実験体は…どうなるんですか?」
「元々あなた方は寿命は長くありません。放っておけば自然に消滅します。これ以上実験体を作って補充しなければ終わりです」
「…」
成る程な…
俺は今まで…
何の為にソライシを必死に集めてたんだろうな…
散々皆言ってた。
知らない方が良い事を突きつけられそうで怖い
知らない方が幸せなのかも知れない
心は欠けてるが虚しい気持ちにはなった…