王都アージナル②
ムーンは、暗くて広い空間に落とされていた。
「前世が猫で助かったー。着地はお手の物!!」
前世が猫なのもあり、暗い空間でも問題なく探索できた。
――ゴゴゴゴッ!!
「な、にゃに!?」
ボスン!!
「でか!…ってこっちにくるな!!喰らえ!」
びっくりしたムーンは、無意識に魔力を込めた猫パンチをお見舞し、巨大な謎の魔物は一撃で頭を砕かれ、そのまま浄化されていった。
フワァ…
――其方に魔力感知の全てを授けよう――
「え?なんの声だ…? ってか、厨二病なの?」
――ドクンッ
心臓を鋭利なもので貫かれるような痛みがムーンに襲いかかかった。
「クハァッ!」
思わず漏れた声と同時に視界が弾け出した――。
「…っは! はぁ…はぁ…。 夢…?」
意識が戻るとムーンは、絶望的な魔力量を感じた。
――これは…。もしかして…。
「私の真のちからーー!!」
「くっふふ。やはり私は天才だったのだな。」と調子に乗りながら周囲を見渡すと、そこは牢屋の中だった。
「あれ。何がどうなったんだっけ?」
――ガチャッガチャッチャッ
魔力の籠った鋼の鎧と銃を持った兵士が、私が閉じ込められてる牢屋の前へ走ってきた。
「獄中にも懲りずに魔力覇気を放ちやがって!」
「王から直々に貴様の処刑を命じられた。」
「え…え!? 待って待って!」
「貴様の言葉に耳を貸す必要はない!」
「刑を執行する!!」
「いや待てって! はいー今はこのポーズしてるから、バリア状態ー! 」
ムーンは腕をクロスさせて、そう言い放った。 もちろん、バリアは貼られていない。
しかし、「構え!」の合図が出ると、一斉に銃をムーンに向けて構えた。
――どうしよう。 あの銃弾って多分、魔力がいじられて強化されてるやつだよね…。
ムーンが夢の中で開放された能力の効果は、しっかりと現実でも持続されていた。
ムーンの目には、全ての魔力量が可視化されていた。
――戦いたくないけど…。
「全魔力解放。」
そう口にすると、ムーンの内に秘めている膨大な魔力が一気に解放され、指揮を執っていた重戦士でさえ一瞬で体がひしゃげる程の重みの魔力が辺りを埋めつくしていた。
ドドドガッ――
壁も完全に破壊され、ムーンは檻から出る事に成功した。
「よし!出られたー!」
檻から開放されたムーンは、足に魔力を集中させ、瞬間的に爆発させて地上へ飛び出る事に成功した。
ドパーン!!
「自由だっー!!!」
(晴れ渡る空、みなぎる魔力、爽やかな風…心地いい。)
ムーンは背伸びをして体を伸ばしながら、空を見上げた。
「なんか、魔力を感じるようになってから、魔力を制御するのが面倒くさくなったな。 …少しだけ解放しておこうっと。」
ムーンは疲労軽減のために、少量だけ魔力を解放しておく事にした。
「あ、あの…。」
「さてと。なんか、お腹空いたなー。」
「あの!!」
ムーンの耳に、少年の大きな声が入ってきた。
「ふぇ?」
いきなり声を掛けられたムーンは、少し返事に戸惑った。
そして、返事をしたあと少年は続けた。
「僕とお友達になってくれないかな?」
「えー。」
ムーンは前世が猫なのもあり、基本的に自由気ままに過ごしたいので、友達などを増やすのは考えてなかった。
「君、僕と同い年か年下っぽいのに、魔力量とか凄いよね!」
「あ、あー…。」
(見た目が小学生か中学生くらいだからかな…?)
「ダメ…かな?」
「えー。でも、私と一緒にいても面白くないと思うよ?」
「僕、君に魔力操作とか戦闘とか色々教わりたいんだよ! 友達になって、一緒に冒険に連れていって!」
少年はムーンが年上であることを知らずに、そう言ってきた。
「えー。まぁ、着いてくるだけ…なら。」
ムーンは「教わりたい」と言われて気分が良くなり、少年を連れていくことにした。
「僕、アールド!」
「あ、あぁ。私はムーン。」
「よろしく!」と言いながら、アールドは握手をしてきた。




