決勝と闇
「さぁ!お待たせしました!ついに決勝です!決勝まで上がってきたのは、アールドとの戦いで見事、接戦を勝ち抜いたゴズ!!そして、爽やかで人気の美少女、またゾルドの二連覇を阻止した、ムーン!!」
――ドワッ!!
選手の紹介がされ、二人が入場してくると会場が揺れるほどの歓声があがった。
「それでは参りましょう!レディ…ファイッ!!」
試合開始の合図がされると、先に攻撃を仕掛けたのは意外にもムーンだった。
「やーっ!!」
(ムーンちゃんが先に攻撃するなんて、珍しいな…。)
「どわっ!」
ゴズはムーンの重いパンチを受けると、観客の目では追えない速さで吹き飛んだ。
しかし、ゴズは場外に出る前に地面に足をつけ、ムーンに体を向けた。
「なかなかやるな…。今度はこっちの番…だ!!」
ゴズの腕は膨れ上がり、血管が浮かんできた。そして、地面を蹴ってムーンに近づくと、拳を力いっぱい振り下ろした。
――ガンッ!!
しかし、その拳がムーンに当たった途端、ゴズは激痛を感じ膝を地面についた。
「…なんて、硬さだ。」
「私の体はダイヤよりも硬くできるんだからね!」
「へっ…。まぁ、いいさ。全力で行かせてもらうからよ!」
ゴズがムーンに攻撃をしようとした時だった。
――ゴゴゴゴ…ドダーンッ!!
観客席の一部が大爆発を起こし、崩壊した。
気がつくと、空は真っ黒な雲に覆われていた。
「なんだなんだ!」
観客は混乱している様子で、闘技場の外に逃げようと必死に走っていた。
「とりあえず逃げるぞ!」
すると、大会の司会者がマイクを使い、走り回る観客に呼びかけた。
「皆さん、落ち着いてください。ゆっくりと焦らずに出口へ向かってください。
繰り返します。ゆっくりと焦らずに出口へ向かってください。」
観客が避難を始めると、いきなり闘技場が大爆発した。一回目の爆発より大きかった。
すると、闇のオーラをまとった巨人が近づいてきた。
「おい、デカすぎるだろ…。」
ゴズは闇の巨人を見上げながらつぶやいた。
――<神話級復活>
ムーンは神話級の蘇生魔法をアールドとゴズにかけて、精神力、魔力、体力の全てを回復させた。
「…なんだ?ムーン。」
「多分、全開じゃないと、あれは倒せないと思う。」
「…戦うってのか!?」
「感じない?恨みと妬みの混じった殺気を…。」
ムーンはいつもはしないような、真面目な顔で闇の巨人を見上げた。
「アールド!!いつでも戦えるよね?」
「うん!」
「…ぶっ壊して…やる。」
闇の巨人はムーンに対して、話し始めた。
「…ムーン、殺してやる…!」
そう言うと、闇の巨人はムーンに向けて、拳を振り下ろしてきた。
――バンッ!!
その拳に向かって、観客席にいたアールドが飛び出し、空中で拳を止めた。
「はぁっ!!…ムーンちゃんに教わった武術!これを突破できると思うなよ!」
その隙を見逃さず、ゴズが闇の巨人の首の部分に拳を当てた。
すると、闇の巨人は後ろに倒れ始めた。
――ガーンッ!!
「ありがとう!ゴズ!!」
ムーンはゴズにそう言うと、周囲の魔素を全て一点に集中させた。
――ドスン…
「…させる…か!」
闇の巨人は技の準備をしているムーンに拳を物すごい速度で振り下ろした。
――カンッ!!
「トリプルシールド!!」
ムーンは右手で技の準備をしながら、左手でシールドを三つ重ねた。
「アールド!こいつの動きを止めといて!ゴズも!」
「分かった!」
「了解!」
アールドとゴズは闇の巨人に無数の攻撃をして、動きを封じた。
「ありがと!じゃ、離れて!技を撃つよ!」
――<神話級隕石!!>
技が闇の巨人に当たると、大爆発を起こし、浄化の光を撒き散らした。
「ぐわっ!!」
闇の巨人の体である金属は浄化され、しばらくすると中からは気を失った男の人が出てきた。
「…あいつは?」
「私は知らないよ?」
――ガーン…ドクンッ
「な、なんだこのプレッシャーは…。」
「ゴズ!一応、構えといて!アールドも!」
二人はムーンの指示に返事をすると、気を失っている男の方を向いた。
――バンッ!!
大きな破裂音のようなものが聞こえると、気を失っているはずの男は目を瞑ったまま宙に浮かび、闇の魔力が辺りに充満し、三人に押し潰されそうなほどのプレッシャーを与えた。
「重た…すぎるぜ。」
「大丈夫?ゴズ!」
ゴズはプレッシャーの強さに思わず、地面に膝をつけた。
「あぁ、すまねぇ…。大丈夫だ。」
ゴズは重さに耐えながら、必死に立ち上がった。
「戦える?」
「あぁ、何でも指示してくれ。」
ゴズは男を睨みながら、戦いに対するやる気を見せた。
――ブォーッ…ドーンッ!!
そして、いきなり闇の魔力が爆発しだすと、男は赤い目を見せた。
「目が…。」
「なんであんなに赤いの?」
「多分、魔王軍の部下だと思う…。」
アールドは真剣な顔つきでムーンに答えた。
「魔王…軍…!」
ゴズはその状況に驚いた。
「魔王軍…。とりあえず、こいつは倒しておいた方がいいかもね。」
ムーンは魔力を全解放して、戦闘準備を始めた。
「いくよ!」
ムーンは二人に声を掛け、士気を上げた。
――十数分後
「おらぁっ!!」
「はっ!」
「はーっ!<神話級隕石>」
三人はずっと技を最大限繰り出していたが、男には届いていなかった。
「硬すぎるぜ…。」
「ムーンちゃんの魔法すら弾いちゃうなんて…。」
「…。」
ムーンは、物理も魔法も効かない男の倒し方を考え始めた。
「…!アールドとゴズ!何とかして、あいつの足を止められる?」
「あぁ、それくらいなら任せてくれ!」
「けど、ムーンちゃん。何をするの?」
「今、新しい魔法を作ったから、それを打ち込んでみる。」
「今!?」
「うん!」
ムーンはニヤッと笑みを浮かべ、魔力を一点に凝縮した。
「はーっ!<神話級投槍>」
ムーンの身長と同じ長さの魔力の凝縮で作った、金色に輝いている槍を投げると金色のオーラを纏い始め、一回り大きくなり、男に刺さった。
――ザッ!!シュパンッ!!
槍が男に刺さると、槍は砕け始め、周りに弾けながら魔素に還元されていった。
男のみぞおち部分には穴が開き、血が流れ出た。
――パタンッ
宙に浮いていた男は、気を失いながら地面に落ちると、闇のオーラと魔力が浄化されていき、男は消えていった。
「…。」
三人がしばらく沈黙をしていると、沈もうとしている夕日が、ほぼ全壊している闘技場をきれいに照らした。
「はーっ!疲れたー!アールド、帰る時はおんぶしてって!」
「分かったよ。おつかれ。」
「けどよ。あいつは一体なんだったんだ…?」
「分かんないけど、とりあえず倒せたんだし、ほっとこー!」
ムーンはアールドに背負われると、アールドの肩に頭を載せ、気が抜けたように眠った。
「じゃあ、ゴズさん!俺たち帰ります!」
「あぁ!この大会の決勝、最後までやりたかったが、仕方ねぇよな。ムーンにまた戦おうって言っといてくれ。」
「わかりました!じゃあ!」
――魔王城
「そろそろ動かねばならないが、マーズよ。お前の部下を動かしていたのだろう?その後はどうだ?」
「はっ!申し訳ありません。私めの部下、ラッドは殺されました。」
「殺された?復活はしないのか?」
「それが、精神も魂も消滅させられていたようで、復活ができないのです。」
「そうか…。では、お前が責任をもって、部下を殺したやつを始末してくるのだ。いいな?」
「承知いたしました…。」




