生徒会役員選挙!
――コンコンコンッ
「ムーンちゃん?起きてるー?」
――ガチャッ
アールドが声をかけていると、ムーンは玄関のドアを開けた。
「あ!アールド!おはよー!」
「よかった。起きてたんだね。」
「そりゃ、そうだよ!ねぇ、一緒に準備しよ!」
「そうだね。」
今日は学園で生徒会役員選挙がある日で、講堂で全校生徒を集めての演説がある。
二人は一緒に持ち物の確認をする事になった。
「タスキは持ったでしょー?ビラも持ったし…。うん!大丈夫かな!」
「俺も準備できたし、朝ごはんに行こっか。」
持ち物の確認が終わり、二人は食堂に朝ごはんを食べに行った。
――食堂
「ムーンちゃんは緊張しないの?」
いつも通り、ガツガツ食べているムーンの様子を見て、アールドは聞いた。
「いやいや、緊張するよー!けど、だからこそ、いっぱい食べないとね!」
アールドはムーンのたくましさに感心した。
「…じゃ、そろそろ行こっか。」
「そうだねー!」
――学園
二人は学園に着くと、それぞれ推薦人のもとへ行き、最終確認をしに行った。
この日、生徒会の立候補者と推薦人はホームルームと一限目にあたる時間を打ち合わせに使っても良いとされている。
選挙は二限目にあたる時間から始まる。
「リシェルちゃん、おはよー!」
「ムーンちゃんおはよう。今日は頑張りましょうね!」
「うん!」
リシェルはムーンに台本を渡し、演説の練習をし始めた。
――
「タング、おはよ!」
「おう!おはよう。今日はバシッと決めようぜ!」
「あぁ。」
アールドとタングもしっかりと、打ち合わせを行った。
「ここの生徒会のメンバーは書記は二人しか選ばれないからな。俺も推薦人として全力を出すぜ!」
アールドはタングの元気な様子を見て、さっきまでの緊張が解けた。
「じゃ、行こうぜ。」
「あぁ。」
――講堂
「生徒会の立候補者とその推薦人の皆さん。お疲れ様です。本日、司会進行を務めます、リリー・クローバーと申します。本日は全校生徒を集め、その中で演説をしてもらいます。そして、全ての演説が終わった直後から投票が開始され、放課後に投票終了となります。
では、これからリハーサルを行ってもらいます。」
立候補者と推薦人は早めに講堂に集められ、リハーサルを行う。
黒髪で清楚なイメージのあるリリー。彼女が指示を出すと、すぐにリハーサルが始まった。
演説の順番は事前に決まっていて、司会者が次々と立候補している役職と本人の名前を呼んでいった。
「お疲れ様でした。もうすぐで、全校生徒が講堂に入ってきますので、皆さんは舞台袖に移動してください。」
リハーサルが終わると、立候補者と推薦人は舞台袖に移動し、ソファやイスに腰をかけた。
「やっほー!アールド!」
アールドが緊張していると、ムーンは声をかすれた小さな声で呼んできた。
そんなムーンを見て、アールドの緊張はほぐれ、手を振り返した。
落ち着いてきた頃、司会者がマイクに声を通した。
講堂からはたくさんの生徒の話し声が聞こえてきた。
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。本日、司会進行を務めさせて頂きます。リリー・クローバーと申します。
それでは、生徒会立候補者・推薦人演説を始めさせて頂きます。まずは、ムーンさんの推薦人からお願いします。」
次々と推薦人の挨拶と演説が進んでいった。
そして、ムーンの推薦人、リシェルの演説の番になった。
「皆さんこんにちは。この度、ムーンの推薦人をさせて頂きます。リシェル・エルディアと申します。
ムーンは、生徒会書記に立候補しており、学園のため、全校生徒のために力を尽くします。なぜなら、ムーンは誰よりも思いやりがあり、人のために動くことができるからです。そんな、ムーンなら最後まで、生徒会書記の仕事をやり遂げることができると思います。
どうか、ムーンに清き一票を。」
リシェルは完成度の高い演説で、講堂を埋め尽くすような拍手を受けた。
「リシェルさん。ありがとうございました。では、次に生徒会書記立候補者のムーンさんお願いします。」
「はい。」
ムーンはステージに立ち、礼をすると演説を始めた。
「こ、こんにちは。生徒会書記に立候補しました。ムーンと言います。」
ムーンが緊張した様子で演説をしていると、「がんばれー!」「ムーンちゃん!」と何人もの生徒から応援の声が出てきた。
ムーンは一つ息を吐くと、リラックスした様子で演説を続けた。
「私が生徒会書記になったら、学園で一人ぼっちの生徒を作らない事です。学園にいる以上、助け合う仲間が必要ですし、何より仲間がいれば感情も芽生えます。私が、その手助けをします。そして、生徒の皆が団結し合うようになれば、魔法や勉学などの実力も伸ばす事ができ、その才能を無駄にすることなく、引き出す事ができます!
私は皆さんが笑って過ごせるよう祈っています。ご清聴ありがとうございました。」
ムーンは緊張しながらも、完成度の高い演説を披露し、一礼して舞台袖に下がった。
生徒たちからは大きな拍手が送られた。
「ありがとうございました。次にアールドさんの推薦人、タングさんお願いします。」
「はい。」
太くてたくましい声で返事をし、タングはステージに立った。
「生徒会書記に立候補しているアールドくんの推薦人となりました。タングと言います。
私がアールドくんと知り合ったのは、入学式の日でした。私が、今まで出会った中で一番強い心を持つ人だと直感で思いました。そして、彼に推薦人を頼まれた時、意志の硬さに心を打たれ、私は彼の推薦人になることを決めました。
そして、選挙前演説の際、誰よりも声を大きく響かせ、学園の皆さんの耳に届くように力強く活動していました。
そんな姿を見かけた生徒も少なくないはずです。なので、彼が生徒会書記になった際、皆さんを優しく、また力強く支え、この学園をより良くしてくれる事でしょう。
アールドに清き一票をお願いします。以上です。」
タングもリシェルに負けず劣らずの演説を見せ、一礼をして下がっていった。
「最後にアールドさん、お願いします。」
「はい。」
アールドは「ふぅ」と息を吐くと、ステージに上がってきた。
「皆さんこんにちは。生徒会書記に立候補しました。アールドです。どうぞよろしくお願いします。
私の目標は地位による差別を無くすことです。学園では、全ての生徒が助け合いながら、成長する場でなくてはいけません。その中で、差別をしてしまうと不満を持つ人や、自分の能力を十分に引き出す事ができない人が出てきてしまいます。それでは、学園に来ている意味がありません。
なので、私が生徒会に入った暁には、皆さんが気兼ねなく学園生活を謳歌できる環境を作っていきたいと考えております。以上です。」
アールドは深く礼をし、自信に満ちた顔で舞台袖へと下がった。
「ありがとうございました。これで、全ての立候補者の演説が終了となります。この後、生徒会室内での投票が開始されます。投票箱の近くには、不正防止のため、生徒会会長と副会長が監視しております。それでは、これにて閉会とさせて頂くと共に、司会の任を解かせて頂きます。」
――放課後
「いやー!お疲れ様!」
「一旦は肩の荷が下りたって感じかなー。」
「そうだね。私たち推薦人の仕事は終わりですね。」
ムーン、アールド、リシェル、タングは放課後、街の飲食店で打ち上げをしていた。
「あとは、開票を待つだけだねー!」
ムーンはジュースをストローで吸いながら、ふわっとした口調で言った。
四人は一時の休息を全力で楽しんだ。




