入学式!!
「あれと、これと…。アールドは準備終わった?」
ムーンは朝早くから焦っていた。
「俺は昨日、終わらせてたよ。」
「えー!アールド手伝ってー!まだ準備してなかったー!」
今日は入学式。合格発表から三週間ほど、ムーンは怠惰を絵に描いたように過ごしていた。
「しょうがないな。早くしないと、入学式に遅れちゃうからね?」
「とりあえず、異空間倉庫に全部入れとけば?」
「そうだね!そうする!」
なんとか準備は終わり、大急ぎで空を飛んで学園へと向かった。
――ズッドーン!!
「ふぅ!何とか間に合ったー!」
「もう少し着地を丁寧にしてもいいんじゃない?」
「いいじゃん。間に合ったんだし!」
二人は学園の校門前に着地した。
「まぁ、これからは寮生活になるし、楽になるかな?」
「うん。朝が弱いムーンちゃんでも遅刻は心配ないんじゃない?」
ムーンは「よかったー。」と言いながら胸をなで下ろした。
そして、二人は入学式会場の講堂へと向かった。制服は、アールドの試験中にムーンが学園に来て受け取っていた。
「皆さん。我が学園への入学おめでとう。これから三年間、充実した学園生活を送ってほしい。それから、君たちは未来のある――」
校長の長い話が終わり、司会者がマイクに声を通した。
「ありがとうございました。次に入学者代表の挨拶。ムーンさんお願いします。」
「…!?ムーンちゃんが?」
アールドはムーンから何も聞いていなかったせいで、とても驚いていた。
「皆さんこんにちは。入学者代表のムーンです。今日、私はこの学園に入学します。これから三年間、遅刻しないように頑張っていこうと思っています!皆さんも三年間頑張っていきましょう!」
ムーンは普段とは別人に思えるほど完璧な入学者代表の挨拶をした。
***
入学式が終わり、クラス分けだけ見て放課となった。
ムーンは既に学園生徒に囲まれていた。特にムーンの容姿から男子の人気があった。
「ムーンちゃんって言うの?俺、タング・オットマール!」
「君のさっきの挨拶よかったよ!」
ムーンは「あはは」と苦笑いをしながら、困った様子で辺りを見渡した。
ムーンは寮に帰ろうとしているアールドを見つけると、ムーンを囲んでいる生徒を掻き分けて、すぐに走ってきた。
ムーンに群れていた学園生徒はアールドに妬みの視線と羨望の眼差しを向けた。
「アールド!一緒に帰ろー!」
しかし、そんな空気をムーンは感じることなくアールドの隣を歩き始めた。
「…うん。そういえばムーンちゃん、完璧な挨拶だったね。」
「あれねー。直前まで台本をずーっと見てたんだよ。」
大変さが伝わる表情でムーンは頭を抱えながら言った。
「けど、そういうのってもっと早く伝えられるんじゃないの?」
「いやー。それが忘れててさ。入学式が始まる前に私の所に先生が来て、その時に思い出したんだよ。」
「そうなんだ…。」
アールドは呆れた。
二人は話しながら寮へと向かった。
「へえー。ここが寮かー。」
「学園の目の前だし、結構きれいだね。」
二人は想像していたよりも数倍きれいな寮を目の前にして、はしゃいでいた。
「…って、ムーンちゃん、なんで俺の部屋に?」
「えー。いつも一緒にいるし、いいじゃん?それより、キッチン付きだし、お風呂とトイレもきれいだねー!」
「そうだね。ていうか、もう自分の部屋もあるし、ゆっくりしてくれば?」
「でも、料理とかできないし…。」
ムーンは口元をもごもごさせながら、恥ずかしそうに呟くとアールドは少し驚いたように、
「え?一階に食堂あるよ?」
とムーンに教えた。
「けど、無料なのは朝と昼だけじゃ…?」
「ムーンちゃん、お金いっぱいあるんだし、お金払って食べに行ったら?」
「やだー!アールドのご飯がいい!」
アールドが提案すると、ムーンは駄々を捏ねてアールドにご飯をお願いした。
「分かったよ。作り置きを作るから、腐らせないようにしてね。」
「どうやって?」
「異空間倉庫を使えば大丈夫じゃない?時間による影響を受けないってムーンちゃん言ってたじゃん。」
「あ!そっか。」
ムーンは納得した様子でうなずいた。
「じゃあ、今日はもう寝るから部屋に戻ってね。料理は作っておいて明日の朝、届けるから。」
「分かったー。おやすみー。」
「うん。じゃあね、おやすみ。」
それから、アールドはムーンの一ヶ月分の弁当を作り始めた。
「よし、やるか…。」
ムーンも自分の部屋に戻り、明日の準備をしてから遅刻をしないように早く寝ることにした。
「明日から授業か…。めんどくさいなー。」
――他の寮生も寝静まった頃。
「やっと終わったー!」
一時ごろ、アールドは弁当を作り終わった。
「学園まで近いし、明日はギリギリまで寝よう…。こんな時間だし。」
弁当を作り終えると、アールドは明日の準備をサッと済ませ、布団に入った。
寮は外のスズムシの音が聞こえるほど静かで、ムーンとアールドはゆっくりと眠る事ができた。




