全員閉じてる?なんでだよ⁉
読多伊予の趣味は小説を読むこと。
毎日あらゆるジャンルの小説を読み、そして好きな作家へファンレターを出すのも同じくらい好きな事だ。
自室には沢山の小説がラックに置かれてあり、何度も繰り返して読んでいるのが本の状態から読み取れる。
そして休日であるこの日は、クラスメイトから聞いた小説サイト『作家になるべえ?』を拝読しているところだ。
(素人さんが書いてるにも関わらず、凄く面白いな。
まるで玄人さんが書いたみたいだ!)
文章力は勿論の事、ストーリー性の良さには思わず拍手を送りたくなる。
伊予の感動は頂点まで達しており、作品に評価、感想を書いて送る事にした。
何作か読んだ作品全てに感想を書く事にした伊予は、感想欄を開こうとする……が。
『感想は受け付けん!』
画面をタップする手がビクリと小刻みに揺れた。
「え……?
『受け付……けん』?」
一度違う場所に目を向け再度見てみる。
『感想は受け付けん!』
見間違いではない。
確かに感想欄が封印されており、攻撃的な断りのワードが赤の太字で書かれてある。
(怖っ……文字だけなのに、何故か怒鳴り声が聞こえてくる気がする。
この作者さん、感想で嫌な事あったのかな)
作品には優しさが溢れているのだが、感想欄を封印している部分にはギャップが伝わってくる。
仕方なく別の作者が書いてある作品への感想を書こうと感想欄を見てみた。
ところがだ。
『感想は受け付けん!』
この作者の感想欄にも、攻撃的なワードが記されてある。
(この作者さんも?
他の作者さんは、どうかな?)
作品を読んでいない作者の感想欄も、念のため確かめてみる。
『感想は受け付けん!』
『感想は受け付けん!』
『感想は受け付けん!』
『感想は受け付けん!』
どの作者の感想欄も封印。
よほど嫌な出来事が在ったのか、それとも偶然だろうか。
一先ず感想は諦め、他の作品を読むことにした。
その時……感想欄に変化が起き、文字も違うものになった。
変化が起きた文字を見た瞬間、伊予の気持ちにも変化が起きた。
(受け付け……開始?)
『感想お待ちしています♪』
「え……?
音符マーク?」
何かの予感が過り、他の作品を確認してみると、全ての感想欄が変化しているではないか。
『感想お待ちしています♪』
『感想お待ちしています♪』
『感想お待ちしています♪』
(どゆこと?
同時に感想封印して、同時に受け付け開始って……)
偶然なのか、故意なのか、現在の感想欄が全て、受け付け中になっている。
まるで下手な小説のような現象を受け、伊予は言葉を吐いた。
「一斉に閉じて、開いてって……朝顔ですか?」