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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

NINJA IN CYBERCITY

作者: 九能 安久

ドーモ、皆様お久しぶりです。クルーエル・ヤッスンです。

更新頻度が落ちてしまい、生存報告として一話完結の短編小説を投稿致します。

内容はというと、某忍殺小説の影響を受けまくったSF小説です。インターネット上の仮想空間で起きる怪事件に忍者のアバターを操る謎の男が挑む……というお話です(爆)

現実世界で忍者同士がサツバツ!したり、サヨナラ!したりする内容ではございませんので、なんとか内容が被ることはない……と思いたいです(汗)

どうか温かい目で見守ってやってください。

連載中の討剣如夢も最終回に向けてしっかりと進めていこうと思いますのでこれからも

クルーエル・ヤッスンをよろしくお願い致します。

時は西暦2238年の日本。サイバーシティTOKYO。

サイバーテクノロジーが技術の革新となったこの都市で、今や世界中の人々がネットにつなげて暮らしている。

サイバーシティTOKYOは世界のテクノロジーをリードする都市だ。

日本政府が「サイバー都市宣言」をしてからというもの、日本は世界でもトップレベルの技術力を誇る国となったのだ。

そんな日本には、ある都市伝説がある。

「サイバー・オブ・ザ・デッド」と呼ばれるその都市伝説を知っている人はそう多くないだろう。

ネットに接続していたネットユーザーが突然死する怪奇現象である。

犠牲者の中には「忍者が襲ってくる」という言葉を残して息絶える者もおり、

その怪奇現象は忍者の仕業という噂が広まっている。

ネットユーザーが「サイバー・オブ・ザ・デッド」の被害に()わないために、

インターネット警備会社UGNは日々監視を続けているのだ。

UGNでは日夜ネット情報を収集しつつ異常事態が起きていないか監視している。

新入社員の江口 (えぐち)栄美(えいみ)は毎日ネット接続しながら仕事ができると聞いてUGNに就職した。

その志望動機は毎日仕事の合間にオンラインゲームを隠れてプレイできるのではという不純な動機であった。

しかし、彼女の期待とは裏腹に、実際に配属されたのはネット警備の部署だった。


「あー、つまんないなぁ」


栄美は今日も今日とてサイバーシティTOKYOの仮想空間で異常がないかチェックする仕事に従事していた。


「毎日毎日ネットの監視なんて……もっとこう、スリルのある仕事がしたいなー」


不満げにそう呟いたが、その(つぶや)きは誰にも聞かれず虚空(こくう)に消えた。

そんな彼女はいつものようにネットに接続をして情報収集を行おうとしていた。


「UGNの新入社員、江口です。今日のニュースはなにかあるかな?」


いつもの要領で栄美はネットに接続してアバターを操作しながら情報収集を始めた。

しかし、その情報は彼女が思っていたものとは違っていた。


「あれ?おかしいな」


栄美は情報端末の画面を見て驚いた。

画面に表示されている情報がいつもと違っているからだ。


「なにこれ?ネットユーザ……殺すべし?え、なにこれ……そんなのマニュアルのどこにも書いてないよ」


その時だった。突然画面に忍者のような頭巾を被った白骨の面を付けた男が現れ、栄美のアバターに襲いかかったのだ!


「キャアアアア!!」


悲鳴を上げる栄美のアバターに、白骨の面を付けた忍者は大ぶりな手裏剣(しゅりけん)を投げつけてくる!


「い、嫌ぁ!」


咄嗟に彼女はよけようとしたが間に合わず、目の前に大ぶりな手裏剣が迫る。その時だった。


「ブルタリティ!」


突然トレンチコートを身につけた男が現れ、栄美のアバターに突き刺さろうとした手裏剣を忍刀で両断した。


「え……?誰、なの……?」


突然現れた男に栄美は驚きを隠せない。そんな彼女に構わず彼は叫ぶ。


「サイバーアサルトモード起動!」


男の叫びと共にその身体が光に包まれたかに見えた瞬間、目の前にパワードスーツを思わせる機械的な(よろい)に身を包んだ忍者が立っていた。


「キサマ……」


白骨の面を付けた忍者はその忍者を忌々(いまいま)()(にら)みつけると共に腰に付けた鎖鎌(くさりがま)を忍者に向かって投げつけた。


「サイバー忍法、スリップシャドウ!」


鎖についた分銅が忍者をすり抜けるようにして地面へと突き刺さり、それを見た白骨の面を付けた忍者が叫ぶ。


「チッ、またキサマか!しぶとさだけは()めてやろう」


「フッ……そのしぶとさだけが俺の取り柄だからな」


そう言って笑う鎧の忍者に対して怒りを露わにする白骨の面を付けた忍者は続けて大ぶりな手裏剣を投げようとするが鎧の忍者はその瞬間を逃さずにクナイを投げつける。


「ぐわっ!」


白骨の面を付けた忍者の鋭い爪が付いた籠手(こて)に包まれた手の甲にクナイが突き刺さると同時に電流が流れ、忍者は思わず手を引っ込める。


「くそっ、覚えていろ!」


白骨の面を付けた忍者はそう言うと闇に溶け込むようにして姿を消してしまった。


「大丈夫か?お嬢さん」


そう言って鎧の忍者は栄美の方へと顔を向ける。

鎧の隙間から見えるその(ひとみ)を見て、栄美は驚いた表情で言った。


「あの……あなたは……?」


栄美の言葉に鎧の忍者は優しく微笑(ほほえ)んだように見えたかと思うと、次の瞬間には姿を消していたのだった……。



5月1日。ゴールデンウィーク前の最後の平日であるこの日、世間はゴールデンウィークの話題で持ちきりだった。

そんな5月1日の夜8時頃の事。

今日も栄美はゴールデンウイーク前日に関わらず残業に勤しんでいた。


「あーもー!なんでゴールデンウイーク前の最後の日に残業なのよ!しかも、この仕事って私じゃなくてもできるじゃない!!」


そんな愚痴(ぐち)をこぼしつつ栄美はパソコンのキーボードを叩いていた。


「まぁ、そう言わずに頑張ってよ」


そんな栄美を励ますように彼女の上司である三上(みかみ) 順子課長(じゅんこかちょう)が声をかけた。


「でも課長……この仕事って私じゃなくてもできる仕事じゃないですか」


不満げにそう言う彼女に三上課長は優しく(さと)す。


「江口さん、そう言わないでちょうだい。UGNはいつも人手不足だから、こういう仕事もやってもらわないと困るのよ」


「はぁ……そうですか……」


そんなやり取りをしつつ栄美は作業を続けるが、ふと彼女はある疑問を抱いた。


「あの……そう言えば課長は例のサイバー・オブ・ザ・デッドってどう思います?」


栄美がそう問いかけると、三上課長は顔を(くも)らせた。


「ああ……あの都市伝説ね……私も聞いた事があるわ」


そう言って彼女は小さくため息をついた。


「正直言って怖いわよね。ネットに(つな)いでいて突然死するなんて、一体どんなウィルスが仕込まれてるのかしら?」


三上課長の言葉に栄美は首を(かし)げる。


「普通に考えたらサイバーテロとかの(たぐい)じゃないんですかね?」


しかし、三上課長は首を振る。


「いいえ、きっと何か別の原因があると思うのよ」


西暦2238年においてネットユーザーは自分が作り出したアバターに意識を映してインターネット上の

仮想空間であらゆる疑似体験をする事が一般的となっている。

同時にネット犯罪も増え、サイバーテロやコンピュータウィルスの蔓延(まんえん)が社会問題となっていたのだ。

そんな話題をする三上課長は栄美に言う。


「そういえば江口さん、あなたゴールデンウイークはどう過ごすの?」


三上課長の問いに栄美は首を傾げる。


「え?普通にゲームして遊ぼうと思ってますけど……なんでですか?」


栄美の言葉に三上課長はこう返すのだった。


「実はね、UGNでこの都市伝説の解明のために社員の一人がネット内に潜入捜査をしていたんだけど……アバターが何者かの襲撃を受けて神経接続していたPCがショートしてしまって現在入院しているの。

かろうじて命に別状はなかったようだけど襲撃を受けた時の記憶が欠落していて、何に襲われたのか

わからないそうなのよ」


「あ、そうなんですか……それで、私にその仕事をやれと?」


三上課長の言葉に栄美はため息をつきつつ問いかけるが、三上課長は首を振る。


「いいえ、そうじゃないわ。ただあなたにもいつ襲撃されるかわからないから一応警戒しておくように伝えておこうと思ったのよ」

そう言いつつ三上課長は手にしたコーヒーカップを口元に運ぶ。


「わかりましたよ、課長。それじゃあ私はそろそろ帰りま……」


そんな栄美の言葉を遮るかのようにして彼女のパソコンにメールが届いた。


「あれ?何これ?」


栄美は不審に思いつつもそのメールを開くとそこにはこんな文面が書かれていたのだ。


『この間は逃がしたが、今日はそうはいかんぞ。ネットユーザ殺すべし、慈悲(じひ)は無い』


「え……?」


思わず栄美は三上課長の方を見るが、彼女は特に驚いた様子もなくこう返したのだ。


「どうしたの?江口さん」


「あ……いえ……なんでもないです」


そう言って栄美は再びパソコンの画面を見る。するとその不審なメールは最初から存在しなかったかのように、メールボックスから消えていた。


「あれ?おかしいな……」


栄美は首を傾げつつもパソコンの電源を落とした。

時刻はすでに夜9時を回っている。これ以上残業しても仕方がないと判断したのだ。


「課長、私はこれで帰りますね」


そう言って彼女は帰り支度を始めるが、ふとある事を思い出して三上課長にこう問いかけた。


「あ、そう言えばこのサイバー・オブ・ザ・デッドって自宅以外に街中の端末でも起こるんですか?」


その問いに三上課長はこう答えた。


「ええ、そうよ。江口さんも気を付けてね、今のネット社会は何が起こるかわからないから……」


そう言って笑う三上課長に対して、栄美は再び首を傾げるのだった。


「ただいまー」


そんな声と共に彼女の家に帰宅した栄美は部屋でくつろぎつつテレビをつける。


ちょうどニュース番組がやっており、そこではサイバー・オブ・ザ・デッドについて特集をやっていた。


『……という訳でして、このサイバー・オブ・ザ・デッドの都市伝説は今やネット社会を生きる我々にとって非常に重要な問題となっているのです』


そう語るのはコメンテーターである女性アナウンサーだ。彼女はサイバー・オブ・ザ・デッドについて解説を始める。


『この都市伝説はインターネットに接続している人々が突然意識を失ったり、酷い時には命を落とすこともあると言われています。また、命に別状はない場合でもインターネットに接続していた際の記憶は失われるそうです』


「ふーん……そうなんだ……」


そんなアナウンサーの解説を聞きながら栄美はふとある疑問を抱く。


(そう言えばあのメール、何だったんだろう……?)


そう思いつつ彼女はパソコンの電源を入れる。すると、やはりというべきか例のメールは消えていたのだった。


(やっぱり気のせいかな……?)


そんな事を考えつつも栄美はPCから神経接続用のケーブルを繋いだヘッドセットを被ると自身の

アバターに意識を映した。

栄美のアバターとなる女性キャラクターはアニメのヒロインのような見た目で、派手なビビッドカラーの髪色に派手なメイクを施していた。

さらにその体型はグラビアアイドルのような豊満な体型で、全体的にセクシーな雰囲気を漂わせている。

小柄な体型で眼鏡をかけている現実の自分とかけ離れたその姿は、栄美にとっての憧れの姿であった。


「あーあ……私もこんなプロポーションだったらなぁ……」


思わずそんなことを呟いていた。


「私だって三上課長みたいにもう少し背が高くて胸が大きかったらいいのに、

なんで現実はこうなのかしら?」


そんな事をぼやきつつも栄美はネットに接続をした。


栄美は早速アバターを動かしていつも通りにオンラインゲームを始めた。


(やっぱりこうやって遊ぶのが一番だよね!)


そんな事を思いつつ栄美がゲームを楽しんでいると、突然画面上に警告メッセージが表示される。


『不審なネットワークへの接続を検知しました』


「え?なにこれ?」


思わず栄美はそう呟くが次の瞬間には彼女の意識が暗転したかと思うと目の前に先日襲いかかってきた白骨の面を付けた忍者が立っていた。


「この間は邪魔が入ったが、今日は逃がさんぞ。ネットユーザ殺すべし、慈悲は無い!」


そう言って白骨の面を付けた忍者は手に持っていた手裏剣を栄美に投げつける!


「きゃあっ!」


突然の事に反応できず、彼女のアバターはまたしても身動きを取れずにいた。

するとその手裏剣に何処からか飛んできたクナイが直撃し、爆発を起こす。


「ぐわあっ!」


その衝撃で白骨の面を付けた忍者は吹き飛ばされた。


「だ、誰!?」


栄美は周囲を見回すが、そこには誰もいない。しかし、彼女は確かに何者かの視線を感じていたのだ。

そして次の瞬間には自分を助けてくれたあの鎧姿(よろいすがた)の忍者が姿を現した。


「キサマ……!」


白骨の面を付けた忍者は憎々し気な目で男を睨む。


「ムクロニンジャよ、罪無きネットユーザを襲うことはこのサイバニンジャが許さんぞ!」


サイバニンジャと名乗った鎧姿の忍者はそう叫びつつ白骨の面を付けた忍者、ムクロニンジャと対峙する。


「おのれ、またしてもこの俺の邪魔をするか!」


そんなムクロニンジャの言葉にサイバニンジャは答える。


「お前たちカオススパイアを一掃し、ネット社会の平和を守ることがシノビインダストリアルから遣わされた俺の役目だ。ムクロニンジャよ、覚悟するがいい!」


そんなやり取りをする二人だが、その隙に栄美はその場から逃げ出していた。


「はぁ……はぁ……」


息を切らせながら仮想都市空間を走る彼女の目の前に黒い影が迫る。

それは物陰から姿を現すとその姿が鮮明に見えた。

黒い忍び装束と黒い面を付けた女性の忍者だ。

その豊満な胸がはちきれんばかりに忍び装束を押し上げ、腰まで届く黒髪が艶めかしい雰囲気を放っている。


「フフフッ、ムクロの奴……獲物を逃がすなんて何をやっているのかしら?まあいいわ、この私が直々に相手をしてあげるから覚悟しなさい!」


そんな女忍者の言葉に栄美は思わず身構える。


(いったい誰なの?)


「まさか……あなたたちがサイバー・オブ・ザ・デッドの原因……?」


震える声で問いかける栄美に女忍者は笑って答える。


「ふふっ、どうかしらね?」


そう言って彼女はクナイを手裏剣のように投げるが、栄美はそれを間一髪で避ける。しかし次の瞬間には彼女の目の前に迫っていた女忍者の蹴りを鳩尾に受けてしまい、悶絶してしまう。


「あぐっ……!」


思わず倒れ込んだ彼女に女忍者は冷酷な笑みを浮かべると言った。


「あらあら、どうしたのかしら?このままだと死ぬわよぉ?」


そんな女忍者の言葉に栄美は恐怖を覚えるが、もう逃げるだけの体力が残っていない。


(ダメだわ……このままだと本当に殺されてしまう……!)


そう考えていた矢先、何かが吹き飛ばされてくる。見るとムクロニンジャと戦っていたサイバニンジャだった。


「くぅ……なかなかやる……カオススパイアの精鋭の名は伊達ではないということか」


サイバニンジャは忍刀を杖代わりに片膝を突きながら栄美を守ろうと立ち上がる。そこへムクロニンジャが鎖鎌を振り回しながら空中から舞い降りた。


「サイバニンジャめ……これだけやってもまだ死なんとはな!」


そして鎖鎌を投げ飛ばしてサイバニンジャの首を締め上げようとするが、その直前に女忍者が立ちはだかる。


「ちょっとムクロ、あんな奴相手にいつまで手を煩わせているのよ?早くこいつらを始末して、データの回収をしないといけないんだから」


「オボロ、お前は黙っていろ!俺は奴と決着を付けねばならん!!」


ムクロニンジャとオボロと呼ばれた女忍者は突然口論を始めてしまう。

2人が揉めている間にサイバニンジャは栄美を助け起こす。


「大丈夫か?すまない、お嬢さんを俺たちの戦いに巻き込んでしまって……だが、この状況を打破するためにはこうするしかない!!」


サイバニンジャは突然立ち上がらせた栄美の胸に手を触れた。


「ええっ!?あ、あなた、いきなり何を!?」


「君のアバターにシノビスピリットをインストールする!カオススパイアの忍者たちと戦う力を!!」


そう言ってサイバニンジャは栄美のアバターに自らのシノビスピリットをインストールした。そして次の瞬間には彼女の体が光に包まれると、一瞬にして栄美は変身を遂げる。その姿は胸当てを装備した女性忍者であり、見た目こそ可愛らしい少女ではあるがその身から放たれるオーラは凄まじく、まさに強者といった雰囲気を漂わせていた。


「こ……これは……!」


自分の変わりように驚く栄美だったが、そんな彼女にサイバニンジャは言う。


「さあ共に戦おう!カスミニンジャ!俺たちでネット社会の平和を守るのだ!!」


「ちょ、ちょっとお!何勝手なこと言ってるのよ、私のアバターにこんな改造するなんて規約違反で訴えてやるわ!」


栄美はサイバニンジャにそう言うが、そんな彼女をオボロは嘲笑う。


「ハッ!馬鹿ね、そんな小娘を忍者にしたところでムクロの奴はともかく私に勝てるとお思いかしらぁ?」


「待てオボロ!俺はともかくとはどういう意味だ!?俺は奴らになど負けんぞ!!」


「うるさいわね!だったらさっさとサイバニンジャを倒してみせなさいな!!」


そう言ってオボロはムクロニンジャに檄を飛ばす。ムクロニンジャはぶつくさ言いながらも気を取り直してサイバニンジャに斬りかかる。対するサイバニンジャは印を結ぶと必殺の構えを取った。


「サイバー忍法、フレイムドラゴン!」


サイバニンジャが叫んだ瞬間、彼の体が炎に包まれる!そしてそのままムクロニンジャに向かって突進した。


「うおおおおお!!」


その勢いにムクロニンジャは思わずたじろぐもすぐに体勢を立て直すとサイバニンジャを迎え撃つべくクナイを構える。だがその時だった。

突如地面から噴き出た炎がムクロニンジャの体を包み込むと同時に燃え上がる。これにはさすがの彼も動揺を禁じえなかったようだ。


「ぐっ!?何だこれは……!」


それはサイバー忍法フレイムドラゴンを使用した際に発生する敵の動きを封じるための炎だった。炎の龍と化したサイバニンジャの渾身の体当たりの直撃を受け、ムクロニンジャは空中へ吹き飛ばされ、大爆発を起こす。


「ぐがああああああっ!!」


その様子を見ていたオボロは舌打ちをして憎しみを込めて叫ぶ。


「サイバニンジャ!この借りは必ず返してやるから覚えてなさい!」


そう言ってオボロは姿を消した。そしてサイバニンジャはカスミニンジャに変身した栄美へ向き直るのだった。


「ふぅ……何とか助かったわ」


栄美は安堵のため息をつくと、助けてくれたサイバニンジャに感謝するのだった。


「助けてくれてありがとう!本当に死ぬかと思ったわぁ……」


そんな栄美にサイバニンジャも笑顔で答えた。


「礼には及ばないよ、君もサイバー・オブ・ザ・デッドの被害者だったんだな、無事で良かった」


そうしてサイバニンジャはその場を離れようとするが、そこで栄美は彼に呼びかけた。


「ちょっと待って!私にシノビスピリットをインストールしたって言ってたけどあれってどういう意味……!?」


栄美の言葉にサイバニンジャは振り返りながら答える。


「君は俺にシノビスピリットをインストールされたことにより、カスミニンジャとなった。これからは俺のパートナーとして働いてもらう。今後ともよろしく頼むぞ!」


サイバニンジャの言葉に栄美は目を白黒させる。そして一言……


「ふざけないでよ!どおして私があんたなんかの相棒にならなきゃいけないのよ!だいたい、あんたは何者なの!?返答次第じゃただじゃおかないんだから!!」


……一言では済まなかった。そう言って栄美はサイバニンジャを怒鳴りつける。だが、彼は動じず言った。


「まあそう怒るなよ、これは君にとっても悪い話じゃないはずだ」


「どこが!?私は安穏としたネットライフを満喫したいだけよ!こんな訳の分からないことに巻き込まれるなんて冗談じゃないわ!!」


栄美の言葉にサイバニンジャはやれやれと言った様子で首を振るとこう言った。


「君は自分のアバターがカオススパイアに狙われていることに気づいていないのか?奴らは君のデータを狙っているんだ、このまま放っておくと君はいずれサイバー・オブ・ザ・デッドと同じ末路を辿ることになるぞ」


「え……?そ……それってどういう意味……?」


サイバニンジャの言葉に栄美は驚きを隠せない。そんな彼女に彼は更に畳み掛けるように言った。


「カオススパイアの連中は君のデータを奪い取ろうとしている。君がこの仮想世界にいる限り奴らは必ずやってくるだろう」


「……そんな……」


サイバニンジャの言葉に栄美は思わず絶句してしまう。


「君だけではない。カオススパイアはネット上のデータを全て掌握し、自分たちの都合のいいように改竄しようとしているんだ。データを無理矢理奪い取ることによりPCとの神経接続にエラーが発生し、ネットユーザを死に至らしめることになろうともな」


「そんな……」


サイバニンジャの言葉に栄美は言葉を失った。そんな彼女に彼は続ける。


「だから俺はこの仮想世界を奴らの手から守り、そしてインターネットの平和を守るために活動しているのだ。カスミニンジャよ、どうか俺のパートナーとなって共に戦って欲しい」


サイバニンジャはそう言って頭を下げる。そんな彼に栄美はため息をついた。


「仕方ないわね……分かったわよ、要するにあなたはあいつらと戦っているんでしょう?だったら一緒に戦ってあげるわ」


そう言って彼女はサイバニンジャの肩に手を置いた。その言葉に彼は顔を上げる。


「本当か!?それは助かるぞ!」


そんな彼に栄美は言った。


「ただし!これだけは約束しなさい!!今後一切私のアバターに勝手に変なことをしないこと!いいわね!?」


「……ああ、もちろんだ」


サイバニンジャは少し間を置いたが、すぐにそう答えたのだった。

そんな彼の態度に栄美は不信感を抱いたが、これから共に戦うパートナーとなることを踏まえて渋々ながらも了承することにしたのだった。

こうしてサイバニンジャはカスミニンジャこと江口 栄美と共に戦うことになるのだが……一方、オボロはというと爆散したムクロニンジャのデータを回収しようと彼が吹き飛んだ地点まで移動していた。

四方八方探していると、焼け焦げてボロボロになりデータ分解を起こしているムクロニンジャを発見したのだった。


「おお……オボロ、た、助かった……早く俺を回収してくれ、早くしないと俺のデータは完全に消滅しちまう……!」


そうやって懇願するムクロニンジャをオボロは見下すような態度で言った。


「何を勘違いしているの?ムクロ、あんたは組織にとってただのデータのバックアップに過ぎないのよ?いくら破壊されたところで代わりのデータがあるんだから」


「そ……そんな……!俺はもう用済みなのか!?」


オボロの言葉に絶望するムクロニンジャ。しかし彼女はそんな彼を鼻で笑うとこう言ったのだった。


「ええそうよ、あんたなんて所詮は使い捨ての駒に過ぎないわ!せいぜい私の役に立てることを喜びなさい!!」


そんなオボロの言葉にムクロニンジャはマスク越しに愕然とした表情を浮かべる。そして次の瞬間、オボロが胸の谷間から携帯端末を取り出して画面に触れるとムクロニンジャの身体は急激な速さで分解を始めた。


「ちょっ……ちょっと待てえぇぇぇぇぇぇぇ……くぁwせdrftgyふじこlp……リトルハバナ!!」


絶叫と共に消滅するムクロニンジャ。その様子を見ながらオボロは顔を赤らめて興奮気味に言った。


「うふふ……あんたの戦闘データは私がちゃ~んと活用してあげるから安心なさいな、

じゃあねぇ~ムクロぅ~♡」


そう言ってオボロは上機嫌にその場を後にするのだった。

こうして一つの戦いが終わり、サイバニンジャたちの戦いは新たなステージへと突入していく。

サイバニンジャとカスミニンジャ……彼らの戦いはまだ始まったばかりであった。

インターネットの怪異を狩る忍者は今日もこのサイバー都市を見守っている。



サイバニンジャが栄美を助ける時に言った「ブルタリティ」とは、


英語で野蛮、残酷、殺伐といった意味です(英文でbrutality と書きます)。

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